2022-04-26 国立天文台
今回の研究対象となった25個のホットジュピターの概念図。(クレジット:ESA/Hubble, N. Bartmann)オリジナルサイズ(2.2MB)
主星の近くを公転する巨大惑星(ホットジュピター)の大気の系統的な特性が、宇宙望遠鏡による膨大な観測データを独自の手法で解析することで明らかになりました。太陽系外惑星の研究は、「発見」の時代から「性質の解明」の時代へと移り変わろうとしています。
太陽系外惑星が発見され始めた1990年代、見つかった惑星の多くは、主星のすぐ近くを公転する巨大惑星でした。「ホットジュピター」あるいは「灼熱(しゃくねつ)巨大惑星」と総称されるこのような惑星は、私たちの太陽系には例がないことから、その成因や性質に大きな関心が集まっています。しかし、一つ一つの惑星の性質を観測から解明することはたいへん困難であり、現在もその挑戦が続けられています。
国立天文台の研究者が参加する国際研究チームは、25個のホットジュピターについてその大気の特性を調べるため、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー宇宙望遠鏡による合計1000時間以上に及ぶ膨大な観測データを再解析しました。惑星が恒星に隠されるときに注目し、独自に開発した解析法を適用して、惑星大気の成分や温度分布を推定しました。惑星ごとにではなく系統的な性質を調べたのです。その結果、多くの惑星では高層の大気が低層の大気よりも高温になる「温度逆転」が生じていることが分かりました。さらに、温度逆転が見られる惑星の大気には、酸化チタン(TiO)や酸化バナジウム(VO)、水素化鉄(FeH)、水素負イオン(H–)などの分子が含まれていることも明らかになりました。これらの分子は高温でしか維持されないことから、惑星大気中の分子が主星の光を吸収して高層の大気を加熱し、温度逆転が生じていると推定できます。この他にも、惑星の大気の成分と構造について、多くの系統的な知見が得られたのです。
この研究は、太陽系外惑星を系統的な特性に注目して調べるという新しい研究手法の幕開けとなりました。2021年12月に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、将来計画されているアリエル宇宙望遠鏡などの新たな観測装置で行われる、太陽系外惑星の詳細な観測研究の基礎となる重要な知見です。
この研究成果は、Changeat et al. “Five key exoplanet questions answered via the analysis of 25 hot Jupiter atmospheres in eclipse”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・サプリメントシリーズ』に2022年4月25日付で掲載されました。