2024-01-04 京都大学
統計的因果推論は、結果に対する原因の影響の大きさを推測するために、いかに統計データを分析できるか考える学問領域です。因果推論の最も標準的なアプローチは、原因となる介入を各被験者に対してランダムに割り当てるランダム化比較実験によって集めたデータを分析することです。従来のアプローチでは、各被験者に対する介入はその被験者のみに影響する、あるいは、すべての被験者は割り当てられた介入を遵守すると想定されることが一般的でした。しかし、実際には、各被験者への介入は複雑な形で他者にも影響すると同時に、割り当てられた介入を遵守しない被験者も存在する状況が数多くあります。
そこで、柳貴英 経済学研究科准教授と星野匡郎 早稲田大学准教授の共同研究チームは、そのような複雑な波及効果と介入割当の不遵守を考慮できる、曝露写像と操作変数法による新しい因果推論手法を開発し、その統計的性質を証明することに成功しました。
本研究成果は、2023年11月17日に、国際学術誌「Journal of the American Statistical Association」に、オンライン掲載されました。
研究者のコメント
「共同研究者の星野匡郎さんとラフな研究アイデアを話していた研究当初の段階から、私たち自身も面白い研究になるだろうと考えていて、論文が掲載されるまでの間ずっと楽しく研究を進めることができました。本研究成果を統計学分野において伝統ある国際学術誌で発表できたことを大変嬉しく思います。波及効果にかかわる課題はまだまだ残されていると感じていますから、今後も研究を進めていきたいと思っています。」(柳貴英)
詳しい研究内容について
他者への影響と不遵守を考慮した因果推論―曝露写像と操作変数法によるネットワークデータ分析―
研究者情報
研究者名:柳 貴英