異常金属における超低速臨界電子電荷ゆらぎの観測に成功~異常金属状態解明の手がかりに~

ad

2023-03-03 兵庫県立大学,東京大学,京都大学,高輝度光科学研究センター,理化学研究所,RUTGERS大学

1. 発表者:
小林 寿夫(兵庫県立大学大学院理学研究科 教授)
中辻 知(東京大学大学院理学系研究科 教授)
瀬戸 誠(京都大学複合原子力科学研究所 教授)
依田 芳卓(高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 精密分光推進室 主幹研究員)

2. 発表のポイント:

◆ 放射光高輝度 X 線を用いたメスバウアー分光法により、量子物質での異常金属状態において超低速電子電荷揺らぎを初めて観測しました。
◆ 異常金属相におけるこの超低速電子電荷揺らぎの発現と、格子振動のソフト化が密接に関係していることも明らかにしました。
◆ 実験結果は、金属状態を記述する標準理論に新たな知見を提供するもので、今後の量子物質や超伝導体の開発にも重要な指針を示すものとなります。

3. 発表概要:
兵庫県立大学大学院理学研究科 小林 寿夫教授の研究グループと、東京大学大学院理学系研究科 中辻 知教授、京都大学複合原子力科学研究所 瀬戸 誠教授、高輝度光科学研究センター 依田 芳卓主幹研究員、理化学研究所放射光科学研究センター 玉作 賢治チー ムリーダー、Rutgers 大学 P. Coleman 教授の研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」(注 1)のビームライン BL09XU および BL19LXU における高輝度 X 線を利用したメスバウアー吸収分光法(注2)により、量子物質超伝導体(注3)β-YbAlB4 の異常金属相における超低速臨界的電荷揺らぎを観測することに初めて成功しました。
量子物質の局在化の近傍で発生する異常金属状態で観測される現象を理解するためには、基盤となる電子電荷の揺らぎ(ダイナミックス)を調べる必要があります。電子と原子核の相互作用を測定するメスバウアー吸収分光法を用いて、温度と圧力の関数として、β-YbAlB4 の異常金属相の電荷揺らぎを調べました。フェルミ液体(注 4)状態での単一吸収ピークは、異常金属状態において 2 つのピークに分裂することが分かりました。このスペクトルの変化は、ポーラロン(注 5)の形成により長い時間スケールで揺らぐ電子電荷の影響で、単一原子核遷移が変調された結果として解釈されます。この超低速臨界的電子電荷揺らぎの観測は、異常金属状態と超伝導発現の起源に新たな知見を提供します。
本成果は、米国科学振興協会(AAAS)発行の『Science』誌に3月2日14時(米国東部時間)にオンライン掲載されました。

詳しい資料は≫

ad

2004放射線利用
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました