黒点計数のための汎用黒点自動検出手法の開発

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2023-01-04 国立天文台 太陽観測科学プロジェクト

黒点や黒点群の数は、太陽活動の指標の中で、太陽の直接観測で得られるものとしては最も長い蓄積があり、長期にわたる太陽活動変動を知る手がかりとなっています。ただ、そのもとになる黒点検出は、今でも人の手によるスケッチが基準となっています。このような主観が入るデータは現在の科学では扱いづらく、また先端的な観測装置により光球からコロナまで多面的にその姿がとらえられる現代の太陽観測を運用する中で、スケッチに労力を投入するのは現実的ではありません。今後は、白色光画像をもとに黒点を自動検出することで黒点計数を継続していくことになると考えられます。

国立天文台では、旧来のスケッチに代わり、1998年以降CCDカメラで撮影した白色光画像をもとに自動黒点検出を行ってきました。しかし、誤検出や検出漏れも少なくなくありませんでした。そこで今回、スケッチ観測の置き換えが可能となるような、より高精度に黒点を検出でき、かつ装置や画質が異なるデータにも対応できる黒点検出手法の開発を行いました。また、画像1枚だけから黒点を検出すると、シーイングの影響で生じた偽黒点をとらえることがあるため、連続して撮影された複数画像から黒点を検出して信頼性を上げることも可能としていて、眼視によるスケッチ観測での利点である、シーイングによる見え方の変化をとらえて黒点を判別するという方法を、自動検出で再現しています。図1は、実際に太陽フレア望遠鏡で得られた太陽画像像上の黒点を検出した例で、赤が半暗部、緑が暗部を示しています。

この手法により、2021年の太陽フレア望遠鏡・川口市立科学館・アマチュアの森田作弘さん (いずれも複数画像を連続して撮影) という三様のデータを実際に処理して得られた黒点数と、スケッチ観測であるロカルノSpecola Solare Ticinese (黒点相対数算出の基準観測所) 及び京都大学花山天文台の黒点数の比較を図2に示しました。画像からの黒点検出で眼視観測に匹敵する結果が得られていることがわかります。また、誤って黒点を検出していないか確認したところ、自動検出での誤検出は0ではないが眼視観測と同等の少なさであることが確認されました。フレア望遠鏡のデータからの黒点検出は私たちのウェブページで公開中であり、また本手法は汎用的に使えるので、科学館・アマチュアなどでもスケッチの代替としての黒点検出を行うことができ、長期にわたって観測を持続すれば黒点相対数算出に貢献することができます。

この研究成果は、Hanaoka, Y. “Automated Sunspot Detection as an Alternative to Visual Observations”として、Solar Physics誌 (2022, 297, 158; doi:10.1007/s11207-022-02089-z) に掲載されました。

Results of sunspot detections for some portions in a continuum image

図1. 太陽フレア望遠鏡で得られた白色光画像 (2014年2月28日) 上で自動検出された黒点。(a)-(c)の領域での検出結果が(d)-(f)で、検出された半暗部を赤で、暗部を緑で示しています。

Comparison between sunspot numbers derived from images with the automated detection and drawings

図2. (a) 2021年の太陽フレア望遠鏡 (SFT)・川口市立科学館 (KSM)・森田作弘さん (SM) の観測での自動検出による黒点数と、Specola Solare Ticinese (SST) 及び京都大学花山天文台 (KO) のスケッチ観測による黒点数との比較。(b) 太陽フレア望遠鏡と各装置の共通の観測日に検出した黒点の数を、太陽フレア望遠鏡の黒点数を1としたときの比で表したものの月平均。

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