2022-07-07 東京大学,科学技術振興機構
ポイント
- トポロジカル超伝導体は、理論・実験の両面から世界中で活発に研究されているが、その探索手法は確立されておらず、実験的な検証も困難なため、これまでに確立された具体的な物質例は極めて少ない。
- 今回はデータベース上の2万7千を超える物質に対して網羅的な計算を行い、それぞれの物質の超伝導相のトポロジカルな性質をまとめた新データベースを構築した。また、簡便に超伝導相のトポロジカルな性質を判定できる新サービスの提供を開始した。
- これらを利用してトポロジカル超伝導体の物質例が新たに見つかれば、今後の量子コンピューターの実用化を後押しすることが期待される。
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻の小野 清志郎 大学院生と渡邉 悠樹 准教授は、中国・南京大学の唐峰(Feng Tang) 博士研究員と万贤纲(Xiangang Wan) 教授と共同で、無機結晶構造データベースICSDに記載されている物質の超伝導相のトポロジカルな性質をまとめた新データベース「Database of Topological and Nodal Superconductors」(https://tnsc.nju.edu.cn)を構築し、公開しました。また、データベース上にない物質や新しい条件下に置かれた物質のトポロジカルな性質も簡便に判定できるよう、「Topological Supercon」(http://toposupercon.t.u-tokyo.ac.jp/tms)という無料サービスの提供を開始しました。
これらの新データベース、新サービスを利用して実際にトポロジカル超伝導体の物質例が新たに見つかれば、トポロジカル超伝導体の表面に現れるマヨラナ粒子を利用した量子コンピューターへの応用が期待されます。
本研究成果は、2022年7月6日(米国東部夏時間)に米国物理物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されました。またEditors’suggestionsとして雑誌編集者の推薦記事にも選ばれています。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP20J21692、JP20H01825、JP21H01789)と科学技術振興機構(JST) さきがけ・トポロジカル材料科学と革新的機能創出「対称性の表現に基づくトポロジカル材料の探索(課題番号JPMJPR18LA)」の支援により実施されました。
<論文タイトル>
- “High-throughput investigations of topological and nodal superconductors”
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
渡邉 悠樹(ワタナベ ハルキ)
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 准教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
科学技術振興機構 広報課