2022-01-20 東京大学,科学技術振興機構
ポイント
- 腕時計型のウェアラブルデバイスなどから得られる腕の動きから、装着者が眠っているのか起きているのかを判定するデータ解析アルゴリズム「ACCEL」を開発しました。
- 腕の動きの躍度(加加速度)を元に、機械学習を用いた解析を行うことで、高い感度(睡眠状態を睡眠と判定する割合)と特異度(覚醒状態を覚醒と判定する割合)を両立した、正確な睡眠覚醒判定が可能となりました。
- 特に、既存の手法よりも高い睡眠判定の特異度を達成したことで、一時的な覚醒をより正確に判定できるようになりました。就寝中の短い覚醒が増えることは、夜間のまとまった睡眠がとりにくくなっていることを示唆し、こういった睡眠の“質”の低下が関わる健康状態の変化を把握するのに役立つと期待されます。
東京大学 大学院医学系研究科の上田 泰己 教授らの研究グループは、腕時計型のウェアラブルデバイスなどを用いて計測することができる腕の動きの情報から、その人が眠っているのか、起きているのかを正確に判定する手法を発表しました。ACCEL(ACceleration-based Classification and Estimation of Long-term sleep-wake cyclesの略称)と命名されたこの手法は、加速度計を用いた腕の動きの測定と、睡眠覚醒状態を知るためのPSG測定を同時に行い、得られたデータを機械学習で解析することで開発されました。ACCELによる睡眠覚醒判定には、ウェアラブルデバイスで測定した腕の動きの加速度の変化を表す躍度(加速度の微分値であり、加加速度とも呼ばれます)のみを用います。ACCELを用いた睡眠判定精度は、90パーセント以上の高い感度と80パーセント以上の高い特異度を達成しています。既存の手法の多くは、睡眠判定の特異度が高くないという問題点がありましたが、ACCELは特にこの点を解決する新規手法として期待されます。
本研究成果は、2022年2月18日出版の「iScience」に掲載されるのに先立って、オンライン公開されました。
本研究は、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社と東京大学 大学院医学系研究科 システムズ薬理学分野との共同研究、および科学技術振興機構(JST) ERATO「上田生体時間プロジェクト」などの一環として行われました。
<論文タイトル>
- “A jerk-based algorithm ACCEL for the accurate classification of sleep–wake states from arm acceleration”
- DOI:10.1016/j.isci.2021.103727
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
上田 泰己(ウエダ ヒロキ)
東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学分野 教授
<JST事業に関すること>
内田 信裕(ウチダ ノブヒロ)
科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 ICT/ライフイノベーショングループ
<報道担当>
科学技術振興機構 広報課