(‘Charging room’ system powers lights, phones, laptops without wires)
2021-08-30 アメリカ合衆国・ミシガン大学
・ ミシガン大学と東京大学が、建物全体をワイヤレス充電地帯に変換する、安全なワイヤレス給電システムを開発。
・ 室内にある導電性の壁や柱が磁場を発生させ、電子機器に統合したワイヤコイルがその磁場を利用して給電する。コンピューターのユビキタスな設置を始め、インプラント医療デバイスへの給電や家庭・製造施設におけるモバイルロボティクス利用の新たな可能性を開く。格納したツールに給電するツールボックのような宇宙空間用の小型システムも開発中。
・ 本研究用に構築したアルミニウム製の試験室(約 9 ㎡)にて、人間や家具の配置場所にかかわらずランプ、送風機と携帯電話にワイヤレス給電して同システムを実証。有害とされるマイクロ波の使用や決まった場所へのデバイス設置の必要性等の、従前のワイヤレス充電システムを大幅に改善する。
・ 同システムの成功の鍵は、有害な電場を隔離しながら部屋のサイズと同等の規模の磁場を作る共鳴構造の構築。中空壁に配置した集中キャパシタが、その内部に電場を捕獲する一方で室内全体に共鳴する磁場を発生させる。これにより、数 mm 間での大量給電または長距離間での少量給電という従前のワイヤレスパワーシステムの制約を克服した。
・ また、室内のあらゆる場所に届く磁場の発生および電力を引き出すためのレシーバの配置の課題について、室内の中央柱付近を円状に移動する磁場と、近接する壁間を移動して四隅に到達する磁場の 2 種類の 3D 磁場を発生させることで解決した。
・ ダミーを使用した試験では、同システムが電磁波エネルギーばく露に関する FCC(米国連邦通信委員会)の安全指針を遵守しながら室内のあらゆる場所で少なくとも 50W の給電が可能なことを確認。システムの改善により給電容量の増加も可能だが、商業・居住環境での実用は数年先となる。
・ 工場やウェアハウスのような大型の建物用へのスケールアップも容易。建物の新築時のシステム設置が最も効率的であるが、金属の支柱を使用する商業ビル等では改修時の導入も可能。また、壁に導電性の表面をスプレーコーティングすることでも利用できる。
・ 本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)および日本学術振興会(JSPS)が支援した。
URL: https://news.umich.edu/charging-room-system-powers-lights-phones-laptops-without-wires/
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Nature Electronics 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Room-scale magnetoquasistatic wireless power transfer using a cavity-based multimode resonator
URL: https://www.nature.com/articles/s41928-021-00636-3
Abstract
Magnetoquasistatic wireless power transfer can be used to charge and power electronic devices such as smartphones and small home appliances. However, existing coil-based transmitters, which are composed of wire conductors, have a limited range. Here we show that multimode quasistatic cavity resonance can provide room-scale wireless power transfer. The approach uses multidirectional, widely distributed currents on conductive surfaces that are placed around the target volume. It generates multiple, mutually unique, three-dimensional magnetic field patterns, where each pattern is attributed to different eigenmodes of a single room-scale resonator. Using these modes together, a power delivery efficiency exceeding 37.1% can be achieved throughout a 3 m × 3 m × 2 m test room. With this approach, power exceeding 50 W could potentially be delivered to mobile receivers in accordance with safety guidelines.