2021-06-30 京都大学
中務真人 理学研究科教授らの研究グループは、津雲貝塚(岡山県)から発掘された人骨の1体(約3000年前)について、骨格に残された無数の傷の成因をサメの襲撃と特定しました。
漁撈・航海の開始以来、サメによる被害は、稀であっても続いてきたと考えられます。サメによる被害は古代ギリシアより記録にありますが、先史時代の考古学的証拠は非常に限られます。これまでプエルトリコで発掘された1000年前の人骨が世界最古の直接証拠でした。
1919年に津雲貝塚から発掘され本学に保管されている人骨のうち、1体(約3000年前)の骨格に無数の傷が残されています。傷の性状分析、全身に及ぶ損傷の位置分析から、成因をサメの襲撃と特定しました。骨の残存状況は良好ですが、右下肢、左手など複数要素は完全に欠落し、周囲の残存部位には咬痕も観察されます。襲撃によりほぼ瞬時に死亡したはずですが、死体は回収されて埋葬されています。縄文時代、サメの歯は装飾品に用いられていますが、形が好まれただけではなく、危険性による希少性があったのかもしれません。本成果は、縄文時代の人々と、海との関わりについて、新しい側面の情報を提供しています。
本研究成果は、2021年6月23日に、国際学術誌「Journal of Archaeological Science: Reports」に掲載されました。
図:左の図は津雲24号人骨に残された咬痕の分布(腹側)を示しています((c)Alyssa White)。丸の大きさは傷の深さを表しています。写真は左の上腕骨。特徴的な咬痕が観察されます(中務撮影)。
研究者情報
研究者名:中務真人