結晶のキラリティ制御で向きが反転する光電流を発見 ~光スピントロニクスへの応用に期待~

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2021-03-24 東北大学 金属材料研究所,東京工業大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 磁石の性質を持たない有機と無機ナノシートの積層構造から、光を用いたスピントロニクスに向けた半導体材料を作ることに成功。
  • 鏡像が自身と重なり合わないキラリティを持つ有機分子と、スピンへの強い効果を持つ重元素(原子番号の大きい元素)を含んだ無機化合物のハイブリッド化で達成。
  • 光を当てると(原理的にはスピン方向がそろっている)電流が流れ始め、その方向が結晶の右・左のキラリティで決まることを発見。

キラルな結晶構造を持ち、重元素から構成される物質は、非磁性であっても電子の磁石としての性質であるスピンによる磁気的性質が引き起こされ得ることから、以前より関心を集めていました。しかし、重元素から成る物質の大半が属する無機物では、自由にキラリティを選択して物質を合成することは非常に難しく、新しい物質の開発が期待されていました。

東北大学 金属材料研究所の谷口 耕治 准教授、宮坂 等 教授らは、東京工業大学 フロンティア材料研究所の笹川 崇男 准教授らとの共同研究により、二次元有機・無機ハイブリッドペロブスカイトにおいて、キラリティの制御が可能な重元素から成る新しい半導体の材料設計に成功し、結晶構造のキラリティを反映した光電流が発生することを発見しました。

本研究では、重元素から成る無機骨格にキラルな有機分子カチオンを挿入する材料設計により、強いスピンや軌道相互作用を持ちつつ、キラリティを制御可能な半導体を実現しました。今回開発した半導体では、光を照射すると、結晶の右・左のキラリティで流れる向きが変わる電流が発生することを初めて見いだしました。この電流は、スピンや軌道相互作用によりスピンの向きがそろっていることが予想されています。

今後、光照射で磁化反転を制御できるメモリデバイスのように、光を利用したスピントロニクスへの応用が期待されます。

本研究成果は、材料科学誌「Advanced Materials」に2021年3月23日付で掲載されました。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR19L4)、同 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR16F2)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 基盤研究(B)(20H01829)、基盤研究(C)(20H00381)、挑戦的萌芽(18K19050)、特別推進研究(18H05208)、住友電工グループ社会貢献基金 研究助成、東北大学 金属材料研究所 先端エネルギー材料理工共創研究センター(E-IMR)からの支援を受けて実施されました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Chirality-dependent circular photogalvanic effect in enantiomorphic two-dimensional organic-inorganic hybrid perovskites”
DOI:10.1002/adma.202008611
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
谷口 耕治(タニグチ コウジ)
東北大学 金属材料研究所 錯体物性化学研究部門 准教授

宮坂 等(ミヤサカ ヒトシ)
東北大学 金属材料研究所 錯体物性化学研究部門 教授

笹川 崇男(ササガワ タカオ)
東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 准教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東北大学 金属材料研究所 情報企画室 広報班
東京工業大学 総務部 広報課
科学技術振興機構 広報課

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