2021-02-25 科学技術振興機構
ポイント
- 天然ガスを有効利用する技術として有望な酸化的メタンカップリング反応(OCM)は、反応機構が複雑で詳細は未解明だった。
- 第一原理計算と反応速度論を融合した手法とプログラムを開発し、酸化マグネシウム触媒の反応効率を理論計算で予測することに成功した。
- 開発した手法を用いて自動車排ガス浄化や二酸化炭素還元に有効な触媒の探索にも適用でき、エネルギー問題解決や脱炭素社会の実現へ貢献が期待される。
JST 戦略的創造研究推進事業において、物質・材料研究機構(NIMS) エネルギー・環境材料研究拠点の石川 敦之 主任研究員は、第一原理計算と反応速度論的計算技術を組み合わせることにより固体触媒の性能を理論的に評価するシミュレーション手法を開発しました。
従来は、単一もしくは限られた数の反応経路に対するシミュレーション研究が主で、実験的情報を使わずに触媒反応の効率を予測することは困難でした。
本研究では、量子力学に基づく第一原理計算と反応速度論シミュレーションを統合する手法を開発し、天然ガス利用において重要となる酸化的メタンカップリング反応(OCM)に適用しました。その結果、反応速度論に関する実験結果を用いずに生成物であるエタンなどの収率を予測することに成功しました。また、温度や分圧による収率の変化も予測し、その結果は既存の実験結果を忠実に再現するものでした。
この研究成果により、実験データがない場合でもシミュレーションから触媒の性能を評価することが可能になるため、理論と計算が主導する触媒材料探索が加速されることが期待されます。
本研究成果は、2021年2月25日(米国東部時間)に国際科学誌「ACS Catalysis」のオンライン版で公開されます。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)
研究領域:「革新的触媒の科学と創製」(研究総括:北川 宏 京都大学 大学院理学研究科 教授)
研究課題名:「第一原理計算と反応速度論を基礎とした汎用触媒活性手法の開発とメタン転換反応への応用」
研究者:石川 敦之(物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 主任研究員)
研究実施場所:物質・材料研究機構
研究期間:平成29年10月~令和3年3月
<論文タイトル>
- “A First-Principle Microkinetics for Homogeneous-Heterogeneous Reaction: Application to Oxidative Coupling of Methane Catalyzed by Magnesium Oxide”
(均一-不均一触媒反応の第一原理微視的反応速度論:酸化マグネシウムによる酸化的メタンカップリング反応への応用) - DOI:10.1021/acscatal.0c04104
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
石川 敦之(イシカワ アツシ)
物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 界面計算科学グループ 主任研究員
<JSTの事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
科学技術振興機構 広報課