2021-01-26 国立天文台
銀河衝突がブラックホール周辺のガスを取り払う様子(想像図)。(Credit: Miki et al)オリジナルサイズ(1.9MB)
ほとんどの銀河の中心には、太陽の質量の10万倍を超える大質量のブラックホールが存在しています。ブラックホールは、そこに落ち込むガスによって明るく輝く活動的なものもありますが、大部分は銀河の中心にひっそりとたたずんでいます。ブラックホールの活動は、銀河の衝突がきっかけで活性化していると考えられている一方で、活動を止める機構ははっきりしていません。ブラックホールが活動を急に停止した痕跡が見られる銀河も多数観測されていることから、活動停止の機構を特定することが望まれています。
東京大学、筑波大学、尾道市立大学および国立天文台の研究者から成る研究チームは、他の銀河との衝突が起こる際、ブラックホールへと落ち込んでいるガスが衝突した銀河によって取り払われるためにブラックホール活動が停止する、という仮説を立てました。
スーパーコンピュータを用いたシミュレーションなどの結果、小型の衛星銀河が大型の銀河に衝突しその中心領域を突き抜けた場合には、大型銀河の中心のブラックホールへと落ち込んでいるガスが取り払われてしまうことが判明しました。つまり、衛星銀河が大型銀河の中心から離れた領域に衝突するとガスの落ち込みが激しくなると考えられてきたのに対し、銀河の中心領域に衝突するとガスを取り払ってしまい、ブラックホールの活動を止めることになるのです。これまで活動を活性化するのみと考えられてきた銀河衝突が、逆に活動を止める働きをすることもあることが明らかになったのです。推定される銀河衝突の頻度も、ブラックホールの活動の活性化と停止のタイムスケールをよく説明できます。
今回の研究によって、銀河中心のブラックホールの活動性が銀河衝突によってコントロールされることが示されました。今後、研究グループは、さらに精度良く長期間にわたる銀河全体の進化のシミュレーションを行い、銀河とブラックホールが互いに影響を及ぼしながら進化する過程の解明を進める予定です。
この研究成果は、Miki et al. “Destruction of the central black hole gas reservoir through head-on galaxy collisions”として、英国の天文学専門誌『ネイチャー・アストロノミー』に2021年1月25日付けで掲載されました。