新たな高品質窒化ガリウム結晶育成法を開発

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2020-11-12 物質・材料研究機構,東京工業大学

NIMSは東京工業大学と共同で、次世代パワーデバイスとして期待される窒化ガリウムの結晶成長において、欠陥を大幅に減らして高品質な結晶を得ることのできる新たな技術を開発しました。

概要

  1. NIMSは東京工業大学と共同で、次世代パワーデバイスとして期待される窒化ガリウムの結晶成長において、欠陥を大幅に減らして高品質な結晶を得ることのできる新たな技術を開発しました。従来のような溶液中での成長ではなく、合金の液体を下地へ塗布して結晶成長させることで、不要な溶液成分が結晶中に残るという問題を解決しました。EV用モータ制御ユニットなど次世代パワーデバイスとしての実用化が期待されます。
  2. 窒化ガリウム半導体は、シリコンよりも大電流・大電圧に耐えることができるため、車載用次世代パワーデバイス等への応用に向けて精力的な開発が続けられています。しかし、従来の原料ガスを基板に吹き付ける窒化ガリウム単結晶育成法では、結晶中に原子のズレ (転位欠陥) が多く生じてしまい、大電流を流した際にその部分を起点にデバイスが破損してしまうという根本的な問題が生じます。そのため現在は、原料を含んだ溶液中で結晶成長させるアモノサーマル法やナトリウムフラックス法と呼ばれる合成法の開発が活発になっています。これらの手法では、転位欠陥といった原子レベルでの結晶のズレは最小限にできるものの、溶液成長特有の問題である「溶液成分が塊状に結晶内に取り残されてしまう (インクルージョン) 」という新たな課題の克服が問題となっていました。
  3. 本研究では、原料となる合金の液体を、基板に塗布しながら窒化ガリウムを成長させることで、インクルージョンの問題を克服しました。下地の基板にガリウムとナトリウムの合金液体を塗布しながら結晶成長させたところ、転位欠陥を大幅に減少させながら、さらにインクルージョンも含まない高品質な結晶の作成に成功しました。本手法は工程も非常にシンプルであるため、約1時間のプロセスによって高品質の窒化ガリウム基板を得ることができます
  4. 今回の成果は、次世代パワーデバイス向けの高品質な窒化ガリウム基板を得る新たな製造方法としての応用が期待されます。現在は本手法の有効性確認のためにサイズの小さな結晶の育成を行っている段階であり、今後、大型結晶化の実証実験を行い実用化技術としての開発を進めていきます。
  5. 本研究は、物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 超高圧グループの川村史朗主幹研究員、光学単結晶グループのソン イェリンNIMSジュニア研究員、機能性材料研究拠点 大橋直樹拠点長 (東京工業大学 元素戦略研究センター 特定教授 併任) を中心とするメンバーによって行われました。本研究成果は、Crystal Research and Technology誌の2020年7月16日発行号にて掲載されました。

「プレスリリース中の図 : 基板に合金溶液を塗布する窒化ガリウム成長法のイメージ図」の画像

プレスリリース中の図 : 基板に合金溶液を塗布する窒化ガリウム成長法のイメージ図



掲載論文

題目 : High-Quality GaN Crystal Growth Using Flux-Film-Coated LPE with Na Flux
著者 : Yelim Song, Fumio Kawamura, Takashi Taniguchi, Kiyoshi Shimamura, Naoki Ohashi
雑誌 : Crystal Research and Technology
掲載日時 : 2020年7月16日
DOI : 10.1002/crat.202000042

0505化学装置及び設備
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