微小な磁気渦の内部変形が引き起こす渦の配列変化

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2020-11-11 東京大学,理化学研究所,高エネルギー加速器研究機構,科学技術振興機構

ポイント
  • 磁気スキルミオンと呼ばれる微小な磁気渦のコア部分の直径の変化に伴って、多数の磁気スキルミオンの整列パターンが突然変化することを発見しました。
  • 磁気スキルミオンの最安定な配列構造は、磁気スキルミオンの内部変形の自由度と密接に関連していることを見いだしました。
  • トポロジカル欠陥の内部自由度を活用した物性制御や機能開拓に向けた研究が広く展開されることが期待されます。

次世代メモリの情報担体の候補として注目されている磁気スキルミオンは、数十ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)程度の渦状の磁気構造体です。磁気スキルミオンはトポロジカル欠陥の一種であり、一度生成されると安定に存在でき、孤立した粒子として扱えることが知られています。これまで磁気スキルミオンは主に三角格子を組んだ状態で観測されてきましたが、最近では試料を急速に冷却すると、準安定状態として磁気スキルミオンを安定化できる温度・磁場範囲が拡大し、スキルミオンの三角格子から正方格子へと配列パターンが変化するという報告がなされています。しかし、この配列変化の起源は明らかになっていません。

東京大学 大学院工学系研究科の高木 里奈 助教、関 真一郎 准教授らを中心とする研究グループは、理化学研究所、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、高輝度光科学研究センターとの共同研究のもと、磁気スキルミオンの三角格子が正方格子へ配列変化する様子を実験と理論の両面から詳細に調べることで、磁気スキルミオンのコア部分の直径の変化が配列変化の起源となっていることを見いだしました。

今回の発見は、磁気スキルミオンのように内部変形の自由度を持つトポロジカル欠陥の集合体がつくる秩序構造を外場制御できる可能性を示唆しており、トポロジカル欠陥が示す新しい物性・現象の開拓につながることが期待されます。

本研究成果は、2020年11月11日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」にオンライン掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)(JPMJPR177A、JPMJPR18L5)、同戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)(JPMJCR1874)、文部科学省 光量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)(JPMXS0120184122)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金基盤研究A(18H03685、20H00349)、基盤研究B(19H04399)および若手研究A(16H05990)、光科学技術研究振興財団、旭硝子財団、村田学術振興財団の支援を受けて、KEK 物質構造科学研究所 放射光実験施設共同利用実験課題(2015S2-007、2018S2-006)のもとで実施しました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Particle-size dependent structural transformation of skyrmion lattice”
DOI:10.1038/s41467-020-19480-8
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

高木 里奈(タカギ リナ)
東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 物理工学専攻 助教

<JST事業に関すること>

嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>

東京大学 大学院工学系研究科 広報室
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 広報室
理化学研究所 広報室 報道担当
高エネルギー加速器研究機構 広報室
高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課
科学技術振興機構 広報課

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