刻々と変化する量子状態を最も精度よく推定する新規手法を実現

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2020-09-16 京都大学

 野原紗季 工学研究科博士課程学生、岡本亮 同准教授、竹内繁樹 同教授は、藤原彰夫 大阪大学教授と共同で、時間的に変化する量子状態を推定できる「連続適応量子状態推定」を提案、シミュレーションおよび実験で、物理学の限界の精度で推定できることを実証しました。

 光子や電子などの「量子」を自在に制御する「量子技術」が大変注目されています。「量子」は、古典力学的な「粒」とは異なり、異なる状態の「重ね合わせ」状態をとります。それらの量子を1回測定すると、それら異なる状態の何れかとして検出されるため、1回の測定では、どのような「重ね合わせ状態」にあるかを知ることはできません。そのため、できるだけ少ない個数のサンプルにより、正確にその量子状態を推定することは、非常に重要ですが、従来手法では最適な推定は実現できていませんでした。以前に竹内教授らの研究グループは、この問題に対して、量子1つ1つの計測結果に応じて毎回「測定方法」を最適化する適応的な推定方法(適応量子状態推定)を、光子を用いた実験で実証しましたが、対象は時間的に変化しない特殊な量子状態に限られており、通常推定の対象となる、時々刻々と変化する量子状態には用いることができませんでした。

 今回提案した連続適応量子状態推定は、光子に限らず、電子や核スピンなど多様な量子系に用いることができます。本研究成果を用いると、より少ない個数のサンプルで、正確に量子状態を推定することができるため、微弱な信号や、高速な現象を捉えることが可能になります。今後、量子技術はもちろん、天体観測や生体光計測まで広い領域にわたって役立つことが期待されます。

 本研究成果は、2020年9月9日に、国際学術誌「Physical Review A:Rapid Communications」に掲載されました。

図:連続適応量子状態推定のイメージ図

詳しい研究内容≫

1701物理及び化学
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