世界のCO₂排出量は3年連続で増加するも、 増加率は低下の見通し

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国際共同研究(グローバルカーボンプロジェクト)による評価

2019-12-03 国立環境研究所,水産研究・教育機構,海洋研究開発機構,エネルギー総合工学研究所世界のCO₂排出量は3年連続で増加するも、 増加率は低下の見通し
グローバルカーボンプロジェクト(GCP) (※1)は、2019年の世界のCO2排出量について、前年比で約0.6%の増加となる見込みであることを発表します。なお、2019年の世界のCO2排出量の増加率は、2017年(+1.5%)、2018年(+2.1%)に比べて低下していました。特に石炭からのCO2排出量が米国で10.5%、欧州で10%減少しましたが、世界全体での排出削減目標を達成するには至っていません。
この研究成果をまとめた評価報告書は、令和元年12月4日(日本時間午前9時)に国際学術誌Earth System Science Data (ESSD) 電子版で掲載されます。

※1:2001年に発足した国際研究計画で、持続可能な地球社会の実現をめざす国際協働研究プラットフォーム「フューチャー・アース」のコアプロジェクト。グローバルな炭素循環にかかわる自然と人間の両方の側面とその相互作用について科学的理解を深める国際共同研究を推進するため、日本(国立環境研究所)とオーストラリア(CSIRO)に国際オフィスが設置されている。

GCPは、Earth System Science Data誌に掲載される論文「Global Carbon Budget 2019」において、過去10年間(2009-2018年)の平均として、化石燃料の燃焼によるCO2排出量は9.5±0.5 GtC yr -1、土地利用変化によるCO2排出量は1.5±0.7 GtC yr-1、大気中CO2増加率は4.9±0.02 GtC yr-1、海洋によるCO2吸収量は2.5±0.6 GtC yr-1、陸域によるCO2吸収量は3.2±0.7 GtC yr-1であったことを示しました。
2019年について、前半6ヵ月間の速報的データに基づき、世界全体の化石燃料の燃焼によるCO2排出量が(前年と比較して)さらに0.6%増加する(0.2%の減少から1.5%の増加の範囲)と予測されました。CO2排出量の増加率については、2017年の+ 1.5%、2018年の+ 2.1%と比較して、2019年は+ 0.6%となり、増加率は減少していました。ただし誤差範囲として、2019年に排出量がわずかに減少した可能性も含まれています。
2019年のCO2排出量の増加率の低下は、1)欧州連合および米国における石炭使用量の大幅(欧州連合で10%、米国で10.5%)な減少、2)中国の経済成長および電力需要成長の低下、3)インドの水害影響と経済成長の低下、4)世界的な経済成長の低下によるものと考えられます。
なお、今回示した予測は、中国、米国、EU、インドの国別温室効果ガス排出量予測ならびに、その他の国については国内総生産(GDP)の予測に単位GDP当たりの排出量の最近の変化を加味して求められています。世界の炭素収支の評価は、1959年から2018年まで一貫した方法で行っていますが、土地利用変化による排出量、陸域CO2吸収量、海洋CO2吸収量などの推定方法にはまだ問題があり、5年周期で現れるCO2フラックスの変動として最大 1 GtC yr-1の不一致があります。
なお、国立環境研究所と水産研究・教育機構は海洋CO2吸収量の評価に必要な海洋表層CO2の最新観測データを、エネルギー総合工学研究所は陸域CO2収支のモデル推計データを、海洋研究開発機構はMIROC-ACTM逆モデルによる陸上・海上の地域別フラックス推計値を提供することで、GCPに貢献しています。
※GCPは、Global Carbon Budgetに関する論文を毎年作成し、人間の活動や自然の要因に由来する炭素収支の変化について最新の数値を示しています。

研究資金

本研究の一部は、環境省の地球環境保全試験研究費課題「海洋表層観測網と国際データベースの整備による生物地球化学的な気候変動等の応答検出」(環1751)によって実施されました。また、環境研究総合推進費課題「温室効果ガスの吸排出量監視に向けた統合型観測解析システムの確立」(2-1701)の成果の一部が本研究に利用されました。

論文

【タイトル】Global Carbon Budget 2019
【著者】Pierre Friedlingstein ほか70名以上
【雑誌】Earth System Science Data (ESSD)
【URL】https://doi.org/10.5194/essd-11-1783-2019【外部サイトに接続します】

問い合わせ先

【本研究について】

国立研究開発法人国立環境研究所
地球環境研究センター GCP国際オフィス
代表 山形与志樹
国立研究開発法人水産研究・教育機構
国際水産資源研究所 外洋資源部 国際資源環境グループ
グループ長 小埜 恒夫
国立研究開発法人海洋研究開発機構
地球表層システム研究センター
ポストドクラル研究員 Naveen Chandra
一般財団法人エネルギー総合工学研究所
プロジェクト試験研究部
副部長 加藤 悦史

【報道担当】

国立研究開発法人国立環境研究所
企画部広報室
国立研究開発法人水産研究・教育機構
広報課
国立研究開発法人海洋研究開発機構
広報課
一般財団法人エネルギー総合工学研究所

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