2019/2/13 マサチューセッツ工科大学(MIT)
・ MIT とドイツ・ブラウンシュバイツ工科大学が、海水の淡水化処理後に排出するブライン(塩水)を有用な化学物質に転換するプロセスを発表。
・ ブラインは海洋に廃棄されているが、高コストのポンピングシステムに加え、海洋生態系への負担を回避する厳重な管理が必要。
・ 淡水化施設に取り込む海水の前処理に利用できる、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)にブラインを転換する。この前処理により海水の酸性度をが変わり、逆浸透膜淡水化処理工場の停止や故障の主要な原因となる海水のフィルタリングによる膜の目詰まり防止に貢献する。
・ 同プロセスでは、不要な化合物を除去するナノフィルタリング後の電気透析処理といった標準的な化学プロセスでこれらの化学物質を回収。同プロセスは新しいものではないが、今回、ブラインからの有用化学物質生産の可能性を分析し、環境への負荷を低減しながら淡水化プロセスの経済的妥当性が向上する商用運転を実現する製品と化学プロセスの特定の組合せを提案した。
・ 水酸化ナトリウムは使用量が多く、コストをかけて購入しているため、処理工場で製造できれば大きな利点となる。その使用量はブラインから回収される総量を大きく下回ることから、製品として販売できる可能性も期待できる。
・ 水酸化ナトリウムに加え、ブラインから塩酸を得ることも可能。塩酸は淡水化工場の部品の洗浄に使用できるが、多様な化学物質生成や水素源としての使用も可能。・ 淡水化処理による世界の水生産量は 1 千億L(約 270 億ガロン)で、これとほぼ同等量の高濃度ブラインを排出する。そのほとんどが海洋に廃棄されるが、塩分の充分な希釈を確実にするための高価な放出システムが必要。
・ 現在の技術では環境に安全なブラインを放出できるが、世界中で展開する淡水化処理において、ブラインから資源を回収して放出量を低減することは経済的・環境的に有益と考える。
・ 同プロセスを実証するプロトタイプ工場建設に関心寄せる企業との議論を進めているが、主要な課題は電力と機器のコスト。金属類や他の化学物質等、ブラインから抽出可能な低濃度物質について調査を継続する。
・ 本研究は、MIT Energy Initiative を通してスペイン・Ferrovial 社傘下のスペイン・Cadagua 社が支援した。
URL: http://news.mit.edu/2019/brine-desalianation-waste-sodium-hydroxide-0213
(関連情報)
Nature Catalysis 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Direct electrosynthesis of sodium hydroxide and hydrochloric acid from brine streams URL: https://www.nature.com/articles/s41929-018-0218-y
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
Seawater is an abundant resource across the world, and its purification and by-product recovery methods are crucial for economical, environmentally safe and sustainable utilization. Desalinating seawater generally produces brine as a by-product that cannot be purified economically with current technologies and which is instead released to the environment. In this Perspective, we discuss direct electrosynthesis of sodium hydroxide (NaOH) and hydrochloric acid (HCl) from sea-water desalination brine as an emerging alternative solution. In this direct electrosynthesis (DE) process, the water splitting reaction is used to produce H+ and OH–, which combine with the brine stream to produce NaOH and HCl. After introducing the scope of the process, we describe developments in earth-abundant catalysts for water splitting and the competing chlorine evolution reaction (CER), as well as challenges in inefficiency and productivity associated with these processes. Finally, we discuss the economic impact and feasibility of direct electrosynthesis.