熱風炉設備を備えた木質バイオマス熱供給プラントが完成、実証開始へ

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 地域に根ざしたバイオマスエネルギーシステムの拡大を目指す

2019-09-04 新エネルギー・産業技術総合開発機構,昭和化学工業株式会社

NEDOのバイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業で、昭和化学工業(株)は、熱風炉設備を備えた木質バイオマス熱供給プラントを同社岡山工場(岡山県真庭市)の敷地内に完成させました。今後、試運転を経て、2019年9月中旬に実証運転を開始します。

本プラントでは、以前よりバイオマス利用が盛んな地元地域で産出される木の皮などの余剰木質バイオマスを燃料とし、生成した熱を同社の珪藻土製品の製造・乾燥工程に利用します。また、本プラントを既存の液化天然ガス(LNG)を燃料とする熱供給プラントに併設し、燃料の価格や調達状況などの変動に応じて、LNG燃料とバイオマス燃料を最適な比率で併用することで、安定的かつ経済性の高いハイブリッド運転を目指すとともに、本事業を通じて同社は、同地域における貴重なバイオマス資源を巡る既存のエコシステムとの共生・協力体制を構築し、地域に根ざしたバイオマスエネルギーシステムの拡大を目指します。

バイオマス熱風炉の外観の写真(左)、バイオマス燃料槽の写真(右)

図1 バイオマス熱風炉の外観(左)、バイオマス燃料槽(右)

1.概要

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、各地域の特性を活かした地域と共生する持続可能なバイオマスエネルギーの導入を促進するためのプロジェクト※1を実施しています。本プロジェクトにおいて、昭和化学工業株式会社は、地域で利用可能なバイオマス資源を収集し、同社岡山工場(岡山県真庭市)にて珪藻土※2原料乾燥のエネルギーとして利用するバイオマスエネルギー地域自立システムの実現可能性の検討を2015年4月から1年半、実施してきました。

具体的には、以前よりバイオマス利用が盛んな地元地域におけるバイオマス資源の利用方法を検討するとともに、既存のLNG燃料との併用方法を検討した他、地域の行政・企業・専門家などと協力し、地域内でのバイオマス燃料の調達から、そのエネルギー利用までを含むバイオマスエネルギー地域自立システムの実現可能性の検討などを実施してきました。

その後、2017年1月から実証フェーズに移行し、システムの設計や必要となる設備などの具体的な検討を進め、今般、同社は、これまでの調整・検討結果を踏まえ、熱風炉設備を備えた木質バイオマス熱供給プラントを同社岡山工場の敷地内に完成し、安定的かつ経済性の高いハイブリッド運転を目指します。今後、試運転を経て、2019年9月中旬に実証運転を開始します。

バイオマスシステムの全体フロー

図2 バイオマスシステムの全体フロー

2.実証設備の詳細

今回完成させたプラントは、既存のLNGを燃料とする熱供給プラントに新たに併設することにより、①既存工場からの排熱を利用したバイオマス燃料の乾燥機能を付加した燃料槽、②珪藻土を乾燥させるための熱源となるバイオマス熱風炉、③熱交換器から構成されます(図3参照)。

バイオマス燃料は地元地域である岡山県真庭市を中心に、鳥取県西部地域、中部地域から木の皮などの余剰木質バイオマスを調達し、24トン/日の規模で消費する予定です。多様な資源を使用することを想定し、燃料槽には既存工場の排熱を利用した乾燥機能を付加するとともに、安定的にバイオマス熱風炉に供給するため、自動クレーンを用いた供給方式を採用しました。熱風炉は、多様な燃料の燃焼に適した階段式火格子(ストーカ)炉で24時間連続燃焼をさせます。熱風炉で生成した燃焼ガスは、熱交換器でクリーンな空気と熱交換※3し、その高温空気を既存工場の珪藻土乾燥工程に吹き込みます。バイオマス熱風炉は最大2,050kW能力で、500℃の高温空気を供給します。

プラント概念のイメージ図

図3 プラント概念図

バイオマス熱風炉設備を安定的に稼働させることで、化石燃料使用量を岡山工場全体で20%低減し、二酸化炭素発生量を年間1,000トン削減する見込みです。その熱エネルギーは既存工場の乾燥工程にて必要な熱量の30%に相当します。また、残りの70%は既存のLNG熱風炉より供給し、バイオマスとLNGのハイブリッド運転を行います。ここでは、燃料の価格や熱量の変動に対して、本プラント専用に開発した統合監視ソフトフェアにより、リアルタイムに運転コストを算出できます。そのデータを用いてLNG燃料とバイオマス燃料の調達状況の変動なども踏まえた最適な比率で併用することで、経済性の高い最適運用を目指します。

3.今後の予定

今後、NEDO事業として本プラントの実証運転を2020年度末まで実施予定であり、NEDO事業終了後には昭和化学工業(株)による自主研究運転を2023年秋まで実施する予定です。これまでの輸入LNGに100%依存する状態から、地元産出のバイオマス燃料を導入し、既存プラントにバイオマス熱供給プラントを併設することで、燃料のハイブリッド化を図ることにより、同社岡山工場におけるCO2排出量削減および燃料費削減に資するとともに、地域経済の振興の観点からは、同地域における貴重なバイオマス資源を巡る既存のエコシステムと共生した持続可能な社会構築に寄与していきます。

また、NEDOは、バイオマスエネルギーの利用拡大を推進するために「バイオマスエネルギー地域自立システムの導入要件・技術指針※4」を策定しており、本実証事業の成果も踏まえて同指針の改訂を行い、広く一般に公開します。これにより、本実証事業をモデルの一つとして熱需要のある全国の他の地域への展開を目指します。

【注釈】
※1 プロジェクト
事業名:バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業

事業期間:2014~2020年度

事業規模:約12.5億円(2019年度委託、助成全体)

※2 珪藻土
珪藻土は植物性プランクトンの一つである珪藻(ケイソウ)が化石となり、堆積したもので、主な構成元素はSiO2(二酸化ケイ素)です。珪藻土の用途はビールを製造する際の濾過助剤や珪藻土バスマットや家の内装などの建材の原料です。
※3 クリーンな空気と熱交換
主要製品である濾過助剤としての珪藻土製品は食品添加物としての基準を満たす必要があるため、その乾燥工程用にはクリーンな空気が必要になります。
※4 バイオマスエネルギー地域自立システムの導入要件・技術指針
事業者や有識者へのヒアリング調査および関連する参考資料に基づいて、バイオマスエネルギー事業への参入を検討する事業者が事業計画を作成する際に留意すべき点や考慮すべき情報をとりまとめたものです。

 

4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:森嶋、原田、中島 

昭和化学工業(株) バイオマス企画部 担当:長田 

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、中里、佐藤 

0505化学装置及び設備1301林業
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