ドローンを活用した森林損害調査の迅速化について
2019-04-23 森林保険センター
森林保険センターでは、大規模災害に起因した森林の損害調査に初めてドローンを導入し、保険金の支払を行いました。
集中豪雨等の大規模災害時における森林の損害調査については、これまでは被害を受けた林道等が復旧した後に実施せざるを得ないため一定の期間を要していましたが、ドローンを活用することにより林道等の復旧を待たずに損害面積が把握できることから、迅速に実施することが可能となります。
1.背景・目的
- 大規模災害の発生時は、道路等が損壊・流失し復旧に時間を要することも多く、森林保険の損害調査を行うまで一定の期間を要します。また、崩壊地付近で調査を行う場合には、危険を伴うこととなります。
- 平成29年7月に発生した九州北部を中心とした集中豪雨(平成29年7月九州北部豪雨)では、福岡県朝倉市において森林や林道等に甚大な被害が発生し、森林保険の損害調査に相当の期間を要することが想定されたため、機構内の森林保険部門(森林保険センター)と研究部門(森林総合研究所)が連携し、ドローンを活用した損害調査の迅速化に向けた取組を開始しました。
2.概要
- 森林保険の損害調査では、被害箇所を正確に把握することが重要であることから、まず国土地理院が撮影した空中写真を用いて被害が集中している区域を特定し、次にドローン(UAV(Unmanned Aerial Vehicle))を活用して高精度の撮影を行い損害区域を確定しました。
- この結果、道路等が通行できず現地まで行けない被害箇所でも安全かつ迅速に調査を行うことができ、一定の精度も確認できたため、準備が整ったものから、保険金の支払を開始しました。
- 損害調査におけるドローンの活用は建築物や車両等による保険事故では既に実施されておりますが、大規模な森林災害の損害調査で、ドローンを活用したのは今回が初めての取組です。
3.課題及び今後の取組
- 朝倉市の災害では被害地が広域にわたっており、撮影が困難な箇所も多数あったため、ドローンによる調査対象森林が限定されたこと、職員の手作業による詳細の確認に相当の期間を要したことが課題として残りました。
- 昨年度も西日本において豪雨(平成30年7月豪雨)が発生するなど、近年、大規模災害が連続して発生している状況にあることから、森林保険センターと森林総合研究所が連携し、更なる迅速かつ広域での損害調査の実施による保険金の早期支払に向け、
・人工衛星画像等の活用
・大規模水害の発生に伴う地形変化が生じたと想定される箇所をソフトウェアを利用し的確に判読する手法
について検討する予定です。
お問い合わせ先
国立研究開発法人 森林研究・整備機構
森林保険センター 保険業務部
小椋(おぐら)・劔持(けんもち)
森林総合研究所 企画部広報普及科
片岡(かたおか)・小松(こまつ)