2018/10/02 京都大学,東京工業大学,自然科学研究機構分子科学研究所
倉重佑輝 理学研究科特定准教授、村橋哲郎 東京工業大学教授、山本浩二 同助教らの研究グループは、自然科学研究機構分子科学研究所と共同で、13個のパラジウム原子を環状不飽和炭化水素で三次元型にサンドイッチした有機金属ナノクラスターの合成に成功しました。
本研究成果は、2018年9月17日に、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
今回、三次元型サンドイッチ構造をもつ新しいタイプの有機金属ナノクラスターが合成されました。この分子の奇妙な構造は、私たちが未だ目にしたことのない未発見の分子群の存在を強く示唆するものです。この分子に学び、安定に存在するための中心金属の数・幾何学的構造、配位子の種類・位置の組み合わせについて明解な理論的説明がなされることで、新しい構造や機能を持った分子の開拓につながることが期待されます。
本研究成果のポイント
- 三次元サンドイッチ型構造をもつ安定なキューブ状有機金属ナノクラスターが形成されることを発見
- サンドイッチ構造内にバルク金属内と同じ最密充填金属構造が形成されることを発見
- 触媒や材料として注目される金属ナノクラスターの新しい分子設計方法を開発
概要
サンドイッチ錯体は1973年のノーベル賞の対象になった化合物であり、二つの環状不飽和炭化水素が2方向から一つまたは複数の金属原子を挟みこむことで形成されます。
本研究グループは、七角形の環状不飽和炭化水素が複数の金属原子に結合しやすい性質をもつことに着目し、10個以上の金属原子が塊状に集合して生じる金属ナノクラスターの周りを環状不飽和炭化水素が6方向からサンドイッチすることで、安定な有機金属クラスター分子が生じることを発見しました。本研究で合成した三次元型サンドイッチ金属ナノクラスターは、炭素平面がキューブ(立方体)状に配置された構造をもち、新たなナノスケール分子として、触媒や機能材料への応用が期待されます。
図:従来型のサンドイッチ金属錯体(左)と、本研究で新たに創出した三次元型サンドイッチ金属ナノクラスター(右)の模式図
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1021/jacs.8b07430
Masahiro Teramoto, Kosuke Iwata, Hiroshige Yamaura, Kenta Kurashima, Koshi Miyazawa, Yuki Kurashige, Koji Yamamoto, and Tetsuro Murahashi (2018). Three-Dimensional Sandwich Nanocubes Composed of 13-Atom Palladium Core and Hexakis-Carbocycle Shell. Journal of the American Chemical Society.