(‘Missing jigsaw piece’: engineers make critical advance in quantum computer design)
2021-08-14 オーストラリア連邦・ニューサウスウェールズ大学(UNSW)
・ UNSW が、3D 誘電共振器を活用して数百万のスピン量子ビット(qビット)を制御する技術を開発。
・ 本研究では、ワイヤによるチップスペースの使い切り、電力の大量消費や熱の発生を伴わずに数百万qビットの制御を可能にする量子コンピュータ-・アーキテクチャを特定。少数の q ビット制御による従来の量子プロセッサの概念実証モデル研究を超えて、量子コンピューター実現の主要な障壁の一つ克服するもの。
・ 電子スピンqビットの制御には、チップ上のqビット近くのワイヤへの通電で発生するマイクロ波磁場を利用するが、ワクチンの新開発等の複雑な演算に不可欠となる数百万qビットへとスケールアップする場合には、次のような問題がある。
・ マイクロ波磁場は距離が離れると急激に減衰するため、ワイヤに近いqビットのみが制御対象となる。q ビット数を増やすにはワイヤ数も増やす必要があるため、チップ上の貴重なスペースを使い切ってしまう。
・ さらに、チップの作動には-270℃を下回る極低温が必要な一方で、ワイヤ数の増加により発熱量が増加してqビットの安定性が脅かされる。このため、ワイヤによる技術で制御可能となるのは数qビットに限定される。
・ 本研究では、シリコンチップ構造を根本的に改造することでこれらの課題に対処。サムネイルサイズのシリコンチップ上に膨大な数のワイヤを配置する代わりに、チップの上から全qビットを同時に制御するマイクロ波磁場の実現の可能性を探った。このような全qビットの制御は、1990 年代に量子コンピューティング研究者らが提案したアイデアだが、実際的な方法が開発されていなかった。
・ 新制御技術では、シリコンチップの真上に配置した 3D 誘電共振器がマイクロ波の波長を集束してそのサイズを 1mm まで縮小。マイクロ波電力を全qビットのスピンを制御する磁場へと効率的に転換する。
・ 新技術の革新性は、qビットを制御する強力な磁場獲得に大量の電力が不要となり発熱の問題を回避できることと、磁場の分布がチップに対して均一であるため、数百万の全qビットが同一レベルの制御を受けられること。
・ 別途開発のシリコンqビットを使用した、同共振器のプロトタイプの試験にも成功。次の段階では、シリコン量子プロセッサ設計の簡素化で新技術を利用する予定。新技術によるチップの空きスペースに量子プロセッサに必要な電子部品を搭載した、数十qビットのデバイスを作製する。
URL: https://newsroom.unsw.edu.au/news/science-tech/missing-jigsaw-piece-engineers-make-critical-advance-quantum-computer-design
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(フルテキスト)
Single-electron spin resonance in a nanoelectronic device using a global field
URL: https://advances.sciencemag.org/content/7/33/eabg9158