2021-07-09 京都大学
藤森真一郎 工学研究科准教授、AI Zhipin 国立環境研究所特別研究員、花崎直太 同室長、長谷川知子 立命館大学准教授、ポツダム気候影響研究所らの研究グループは、水資源の制約が世界規模でのバイオエネルギー生産にもたらす影響を推定しました。
全球平均気温の上昇を2℃や1.5℃に抑えるには、21世紀後半に世界の温室効果ガスの排出量をマイナスにすることが必要です。その実現の方法として、二酸化炭素回収・貯留(CCS)付バイオエネルギー(BECCS)という技術がありますが、エネルギー作物を栽培するため広大な農地が新たに必要となります。このとき、農地を灌漑する(畑に水やりをする)ことによって収穫量を増やせば、必要な農地を減らすことができると考えられてきました。
本研究グループは、詳細なシミュレーションを実施し、食料生産、生物多様性の保全、他の用途での水利用、水源の持続可能性などを考慮すると、灌漑はBECCSの最大実施可能量(栽培可能面積を最大限利用してエネルギー作物を生産してエネルギー利用・二酸化炭素回収・貯留を行うことで大気中から除去できる二酸化炭素量)をわずか5-6%しか高められないことを明らかにしました。
本研究成果は、2021年7月6日に、国際学術誌「 Nature Sustainability」に掲載されました。
図:(a)BECCS最大実施可能量(炭素換算10億t yr-1)、(b)エネルギー作物用農地(百万ha)、(c)エネルギー作物生産に伴う追加的な灌漑取水量と水源(km3 yr-1)
研究者情報
研究者名:藤森真一郎