東方最大離角を迎えた水星

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2021-05-19 国立天文台

東方最大離角を迎えた水星[左]2021年5月14日、日の入り後の月と水星(矢印の先)。[右]左の風景から月と水星部分をトリミングしたもの。この時の水星は0.1等で輝いているが、日暮(ひぐれ)を過ぎたばかりの空の明るさと大気のかすみの中で非常に淡く写っている。(クレジット:内藤誠一郎) オリジナルサイズ(5.9MB)

2021年5月14日19時20分頃に撮影した写真です。月齢2.6の三日月が見えています。新月の直後、まだ明るい空に糸のような細さで見える月には、「繊月(せんげつ)」という呼称もありました。

その右側(北寄り)のやや低いところに、かすかに光る点が写っています。水星です。この日の空はかなりかすんでいて、肉眼で気づくのは難しい状況でした。

水星は、明け方や夕方の時間帯に低い高度でしか見ることができません。17日に水星が東方最大離角を迎えたこの5月は、高度が高く、2021年で最も観察しやすい時期になっています。早くも梅雨空が広がりつつありますが、夕方に晴れ間が訪れたら、国立天文台「ほしぞら情報」を観察のヒントにして、日の入り後の西の空に注目してみてください。

水星が東方最大離角(2021年5月)

2021年5月15日、日の入り後の西の空2021年5月15日、日の入り後の西の空。水星は、おうし座の方向に見えている。この時の高度は約12度。探すには見晴らしの良い場所を選びたい。(クレジット:内藤誠一郎)オリジナルサイズ(4.4MB)

1日たち、月はより高い位置に移動しています。ちらほらと現れてくるのは、沈みゆく冬の星座。入れ替わるように、金星が少しずつ高度を上げてきますが、この日は低い雲の中。もう少し暗くなると水星もよりはっきり見えたはずなのですが、残念ながら間もなく広がってきた雲に覆い隠されてしまいました。

水星は、肉眼で見つけられるため古代から知られていた惑星です。しかし、その素顔はいまだ多くの謎に包まれています。太陽系の最も内側を公転する惑星を訪ねた探査機は、数少ないのです。今、2機の探査機がこの水星に向かっています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した水星磁気圏探査機「みお」と、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が担当する水星表面探査機「MPO」が連携して臨む水星探査計画「BepiColombo(ベピコロンボ)」は、初めての大規模で総合的な水星観測ミッションです。2018年10月に打ち上げられた探査機は、2025年12月に水星周回軌道に投入される予定です。

水星磁気圏探査機 みお(JAXA宇宙科学研究所)

文・写真:内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)

1701物理及び化学
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