2021-01-05 東京工業大学,科学技術振興機構
ポイント
- 高分子結晶化過程の解明は材料の強度・透明性・成形加工法などに関わる重要な課題。
- 結晶成長過程を蛍光によって可視化・定量評価する方法はこれまでになかった。
- 高分子結晶化過程で発生する微小応力を、蛍光を発する分子を用い初めて検知。
- 高分子結晶化の理解に貢献し、結晶性高分子の設計や成形加工法への波及効果に期待。
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の大塚 英幸 教授と加藤 颯太 大学院生(博士後期課程2年)らは、高分子の結晶成長過程を蛍光によって可視化・定量評価することに成功した。
高分子結晶化過程の解明は材料の強度・透明性・成形加工法などに関わる重要な課題だが、これまでは結晶成長過程を蛍光によって可視化・定量評価する方法はなかった。
大塚教授らは結晶化過程で生じる「微小な力」を検出し、蛍光を発する特殊な分子を利用することで、蛍光顕微鏡による結晶化過程の可視化・定量化を実現し、共焦点蛍光顕微鏡観察によって三次元観察も可能にした。
今後、さまざまな高分子の結晶化過程を可視化できるようになれば、結晶性高分子材料の設計指針の提案のみならず、高分子材料の加工法にも大きな波及効果をもたらすと考えられる。
本研究は、東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の丸山 厚 教授のグループおよび理化学研究所の沼田 圭司 教授(現 京都大学)のグループの協力を得て実施した。
本研究成果は2021年1月5日(英国時間)に国際科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開される。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られた。
JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域
「革新的力学機能材料の創出に向けたナノスケール動的挙動と力学特性機構の解明」(研究総括:伊藤 耕三 東京大学 教授)
研究課題名
「動的共有結合化学に基づく力学多機能高分子材料の創出」
研究代表者
大塚 英幸(東京工業大学 教授)
研究期間
令和元年10月~令和7年3月
<論文タイトル>
- “Crystallization-induced Mechanofluorescence for Visualization of Polymer Crystallization”
(高分子結晶化を可視化するための結晶化誘起メカノフルオレッセンス) - DOI:10.1038/s41467-020-20366-y
<お問い合わせ先>
大塚 英幸(オオツカ ヒデユキ)
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤ シユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東京工業大学 総務部 広報課
科学技術振興機構 広報課