アルマ望遠鏡、イオの火山による大気への影響を明らかに

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2020-10-22 国立天文台

木星の衛星イオをアルマ望遠鏡が観測し、イオの火山活動がイオの薄い大気に与える影響を直接調べることに初めて成功しました。

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アルマ望遠鏡が電波で観測した、イオの二酸化硫黄の広がり(黄色)。
イオの表面画像は、ボイジャー1号とガリレオ探査機で撮影されたものです。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した木星の画像も合成しています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello; NASA/ESA


木星の衛星イオは、太陽系に数ある衛星の中でも最も火山活動が活発な衛星です。地球の3分の1の大きさしかないイオですが、その表面には400以上の活火山が見つかっており、硫黄を含むガスを放出しています。そのガスが凍りつくことで、イオの表面は黄色やオレンジ、赤色と色とりどりの模様におおわれています。

イオには、地球の10億分の1ほどというごく薄い大気があります。これまでの研究から、イオの大気は火山活動に由来する二酸化硫黄が主成分であることが知られていました。「しかし、これらが直接火山から噴き出したものか、あるいは地表に降り積もって凍りついた物質が太陽光に温められて昇華して大気に混じるのか、わかっていませんでした」と、今回の論文の筆頭著者であるインキー・ド・ペーター氏(カリフォルニア大学バークレー校)はコメントしています。

ド・ペーター氏らの研究チームは、これを見分けるために、イオが木星の影に入るときと出るときの観測を行いました。イオからすると、日食になる直前と直後ということになります。

「イオが木星の影の中に入っているときは、太陽光が当たらないので非常に低温になり、二酸化硫黄はイオの表面に氷となって蓄積します。この期間、大気に含まれるのは火山から直接供給された二酸化硫黄だけです。これを観測することで、大気成分が火山活動によってどれくらい直接影響を受けているかを調べることができるのです。」と、共同研究者のスタチア・ラゼチ-クック氏(コロンビア大学)は語っています。

アルマ望遠鏡の高い解像度と感度により、研究チームはイオの火山から吹きあがる二酸化硫黄と一酸化硫黄のガスをとらえることに初めて成功しました。この観測結果から、イオの大気の30パーセントから50パーセントは火山から直接供給されていると研究チームは見積もっています。

アルマ望遠鏡は、火山から噴出する第3のガス、塩化カリウムも検出しました。ラゼチ-クック氏は、「二酸化硫黄や一酸化硫黄が検出されない場所で、塩化カリウムが検出されました。これは、異なる火山の下にあるマグマの組成が異なっていることを示す強い証拠といえます。」と説明しています。

イオの火山のエネルギー源は、強い潮汐力です。イオが木星を周回する軌道は、完全な円形ではありません。また、月がいつも地球に同じ面を向けているように、イオも同じ面を常に木星に向けています。木星のほかの衛星であるエウロパやガニメデがイオに及ぼす重力の影響も相まってイオの内部は熱せられ、火山活動が起きています。ラゼチ-クック氏は「イオの大気と火山活動を調べることで、火山そのものだけでなく、潮汐加熱やイオの内部についても知ることができるのです。」とコメントしています。

未解明の謎として残されているのは、イオの下層大気の温度です。研究チームは、今後のアルマ望遠鏡による観測でその温度を測定することを目指しています。ド・ペーター氏は、「イオの大気の温度を測るためには、より高い解像度が必要になります。高い解像度を実現するには長時間の観測が必要になりますが、時間が経過するとイオが数十度も自転してしまうので、その効果を補正するためのソフトウェアも必要です。私たちは、アルマ望遠鏡とジャンスキーVLAを使った木星本体の観測ですでにこの仕組みを実現しています。」と明るい見通しを持っています。

この記事は、米国立電波天文台のプレスリリースをもとに作成しました。

論文情報
この論文は、Imke de Pater et al. “ALMA Observations of Io Going into and Coming out of Eclipse”として、惑星科学の専門雑誌「プラネタリー・サイエンス・ジャーナル」に掲載されます。

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