情報による観測量の変化速度の熱力学的な限界を発見

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2020-06-17 東京大学,京都大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 熱力学的な観測量の変化速度と情報の抽象的な概念を結びつけることに成功した。
  • 観測量の変化速度に関する情報による熱力学的な限界を新たに導出した。
  • 有限の熱コストで機能している生体システムにおいて、この熱力学的な限界が情報処理速度に影響している可能性があるため、生体システムの熱力学的な理解が進むと期待される。

近年、生体分子などの小さなシステムで、情報という抽象的な概念を考慮する必要性が盛んに議論されています。代表的な例はマクスウェルのデーモンと呼ばれる考え方であり、この考え方によると情報という概念も熱力学的なリソースとみなせるとされてきました。一方で、この情報という概念が熱力学的な観測量とどう関連し影響し得るかについては、現在に至るまで深く考察されてきませんでした。

今回、東京大学 理学系研究科の伊藤 創祐 講師と京都大学 Andreas Dechant 研究員は、確率過程で記述されるダイナミクスに情報幾何学の視点を加えることで、熱力学的な観測量の変化速度と、「フィッシャー情報量」などの情報の抽象的な概念を結びつけることに成功しました。また観測量の変化速度に関する新たな熱力学的な限界を発見し、生体システムにおいて隠れた自由度を検出する方法を提案しました。

有限の熱コストで機能している生体システムにおいて、この熱力学的な限界が情報処理速度に影響している可能性があるため、今後本結果を通じて生体システムの熱力学的な理解が進むと期待されます。

本研究成果は2020年6月15日(米国東部夏時間)、国際科学誌「Physical Review X」に掲載されました。

本研究はJST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「情報幾何と熱力学による生体コンピューティング理論」(JPMJPR18M2)の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Stochastic time-evolution、information geometry and the Cramér-Rao Bound”
DOI:10.1103/PhysRevX.10.021056
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

伊藤 創祐(イトウ ソウスケ)

東京大学 大学院理学系研究科 生物普遍性研究機構 講師

Andreas Dechant

京都大学 大学院理学研究科 特定研究員

<JST事業に関すること>

舘澤 博子(タテサワ ヒロコ)

科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ

<報道担当>

東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室

京都大学 総務部 広報課 国際広報室

科学技術振興機構 広報課

1701物理及び化学
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