2018-03-13 国立天文台
みなみのうお座のフォーマルハウトは、秋の夜空に輝くたったひとつの一等星として知られています。ハッブル宇宙望遠鏡はこの恒星の光を散乱する塵(ちり)の環を写し出していましたが、アルマ望遠鏡は塵が放つ電波をとらえることで、その環の姿をよりくっきりと描き出しました。画像はハッブル宇宙望遠鏡の画像を青色、アルマ望遠鏡の画像をオレンジ色で合成したものです。可視光線を観測するハッブル宇宙望遠鏡では「コロナグラフ」を使って星の光を遮る必要がありますが、アルマ望遠鏡はその必要がないため、光のノイズに邪魔されないクリアな画像が得られました。環の半径は約200億キロメートル、太陽系で言えば冥王星軌道の約3倍の大きさです。
文:平松正顕(チリ観測所)
つながるダストリングと惑星形成
この画像を見たときに、数年前に発表されたアルマ望遠鏡のフォーマルハウトのデータで、半分だけのリングの画像を見たときのことを思い出しました。そのときは、ハッブル望遠鏡で見ることのできる範囲をほぼ同じ解像度で見ることができるようになったと驚いたのと同時に、電波で円盤が見えるようになれば、そこにある分子の情報からより詳細な惑星形成の環境情報がわかるようになるのではと期待していました。今回、完全なリング状に観測されたダストリングの成分が太陽系の彗星(すいせい)と似ている点も興味深く、主星(恒星)の温度に関わらず同じ惑星形成のプロセスが存在するかもしれないということは、惑星形成において重要な示唆になるでしょう。
文:日下部展彦(自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター)
画像データ
天体 | フォーマルハウト |
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望遠鏡 | アルマ望遠鏡 、ハッブル宇宙望遠鏡 |
クレジット | ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. MacGregor; NASA/ESA Hubble, P. Kalas; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF) |
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