2019-04-02 国立天文台
唯一捉えられたマイクロレンズ現象による増光。 オリジナルサイズ(158KB)
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ HSCで得られたアンドロメダ銀河のデータを詳しく解析した結果、原始ブラックホールがダークマターである可能性が低いことが観測的に初めて明らかになりました。
宇宙には通常の物質の約5倍の総量のダークマターがあることが分かっています。ダークマターの重力によって、銀河や銀河の集団はその形を保っています。ダークマターの偏りは、宇宙の進化に大きな影響を及ぼしています。しかし、そのような重要な役割を持ちながら、ダークマターの正体は分かっていません。
ダークマターの候補として、宇宙が高温かつ高密度だった宇宙初期に形成されたかもしれないブラックホール(以後、原始ブラックホール)があります。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の高田昌広主任研究者・教授 を中心とする国際研究グループは、この可能性を検証すべく、アンドロメダ銀河に着目しました。アンドロメダ銀河と私たちの間に原始ブラックホールがたくさんあれば、それが引き起こす重力レンズ効果によって、アンドロメダ銀河の星が数十分程度の間だけ明るくなる「マイクロレンズ現象」が多数観測されるはずです。グループでは、すばる望遠鏡のHSCを用いた7時間にわたる観測データを解析しました。原始ブラックホールがダークマターの主成分であれば1000例程度が期待されましたが、実際に捉えられたマイクロレンズ現象はわずか1例でした。このことは、原始ブラックホールがダークマターである可能性が低いことを意味します。ダークマターの正体は、未知の素粒子である可能性が高まりました。
本研究成果は、英国の科学雑誌『ネイチャー・アストロノミー』に2019年4月1日付で掲載されました。