2024-02-05 京都大学
私たちの身の回りには、朝顔の蔓や、ガーデニングの水撒き用のホース、糸やロープ、スパゲッティなど、ひも状の物体が多くあります。これらのひもは、別の物体の周りに巻き付いていることも多くあります。しかし、自重で垂れ下がったひもを別の物体の周りに巻き取るという現象において、巻き付いたひもの形態やその形成メカニズムは、これまでわかっていませんでした。
谷茉莉 理学研究科助教(研究当時:東京都立大学助教)、和田浩史 立命館大学教授らの研究グループは、この問題に対して、弾性体のひもを用いたモデル実験と数値シミュレーション、弾性理論を組み合わせて研究を行い、ひもが棒に巻きつく際の巻き付き形状と間隔が、ひもの硬さ・太さ・長さと、巻き付かれる棒の太さに依存することを明らかにしました。得られた結果は、幾何形状の変化を伴う弾性体の基本的な問題の理解を促進するのみならず、材料力学や、ロボットのソフトアームの開発などの応用にも繋がることが期待されます。
本研究成果は、2024年2月2日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。さらに本論文は、同誌の「Editors’ Suggestion」(注目論文)に選定されました。また、アメリカ物理学会のPhysics Focusにも取り上げられました。
私たちの身の回りにみられる巻き付き形状(朝顔の蔓、ガーデニング用の水撒きホース、糸、スパゲッティ)と、実験で得られた巻き付き形状(写真の撮影はいずれも谷茉莉)。
研究者のコメント
「『ひもは他の物体にどのように巻き付くのか』という一見簡単そうな問いですが、きちんと理解しようと思うと、弾性、幾何、重力、摩擦が関係した複雑な問題でした。一方で、最終的に得られた結果はシンプルであるため、基礎的・応用的な研究発展、産業への波及が期待できます。また、自身の手元でひもを弄って試すことが可能なので、色々な方々にこのような問題を身近に感じていただけるきっかけとなれば嬉しいです。」(谷茉莉)
詳しい研究内容について
柔らかいひもの巻き付きのしくみを解明―ひもはどのように他の物体に巻き付くのか?―
研究者情報
研究者名:谷 茉莉
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.132.058204
【書誌情報】
Marie Tani, Hirofumi Wada (2024). How a Soft Rod Wraps around a Rotating Cylinder. Physical Review Letters, 132(5):058204.