メタバース空間内のノンプレイヤーキャラクターを自動生成する生成 AI を開発

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~高度なプログラミング技術が必要なビヘイビアツリーをテキスト入力のみで自動生成を実現~

2024-01-16 株式会社NTTドコモ

株式会社 NTT ドコモ(以下、ドコモ)は、メタバース空間内のノンプレイヤーキャラクター※1(以下、NPC)を、テキスト入力のみで自動生成する生成 AI(以下、本技術)を世界で初めて開発※2 しました。本技術を利用することで、プログラミングやアルゴリズムなどの専門知識が無くても、外見や行動、空間内での役割を備えた NPC を 20 分程度 ※3 で自動生成することが可能となります。

本技術は、「行動ロジック生成 AI」、「アニメーション生成 AI※4 」、「外見生成 AI※5 」の 3 つの生成 AI で構成するもので、「行動ロジック生成 AI」の開発、および 3 つの生成 AI を自動連携する技術の開発はドコモ独自であり、世界初となります。「行動ロジック生成 AI」は、メタバース空間内の NPC の行動を規定する一意のビヘイビアツリー※6 をテキスト入力のみで自動生成する技術です。NPC の行動はビヘイビアツリーという手法を用いて規定されることが一般的で、ビヘイビアツリーの作成はこれまでプログラム開発者が要求仕様をコード記述を用いて制作するなど、ある程度の技術が必要でした。

<ビヘイビアツリーイメージ>

メタバース空間内のノンプレイヤーキャラクターを自動生成する生成 AI を開発

さらに、3 つの生成 AI を自動連携する技術の開発により、「行動ロジック生成 AI」で生成したビヘイビアツリーと、「アニメーション生成 AI」で生成した NPC の骨格データ、「外見生成 AI」で生成した NPC の 3D モデルの 3 つを連携させ、テキスト入力のみで NPC を自動生成することが可能となります。

<3 つの生成 AI の自動連携イメージ>

ドコモは本技術をさらに高度化し、2024 年度中に株式会社 NTT コノキューが提供する仮想空間プラットフォーム「DOOR」への実装をめざして取り組むとともに、お客さまの生活が便利で豊かになる活用方法を探索し、地方創生や地域活性化に貢献する新しい技術やサービスの開発に向け取り組んでまいります。

なお、本取り組みは、2024 年 1 月 17 日(水)からドコモが開催する「docomo Open House’24」 へ出展します。
(https://docomo-openhouse24.smktg.jp/public/application/add/32

※ 本取り組みは、パートナーとともに人々の生活がより豊かになる技術の価値検証を行うドコモの「ライフスタイル共創ラボ」の取り組みの一環で、さまざまな産業分野で活用可能とする「イノベーション共創基盤」の開発も行ってまいります。

※※ 本取り組みは、新しいアイデンティティ・コミュニティの形成をめざす「メタコミュニケーション構想」を基軸としており、将来的にはドコモが有する LLM 付加価値基盤やパーソナルデータと連携も図ってまいります。

※1 ゲーム空間を始めとしたメタバース空間に存在する、プレイヤーが操作しないキャラクター。
※2 ドコモ調べ(2023 年 12 月時点)。行動ロジック生成 AI は、株式会 NTT ドコモが特許出願中です。 ※3 本取り組みの検証結果に基づく数値です。
※4 「Human Motion Diffusion Model」を利用しております。(https://guytevet.github.io/mdm-page/)
※5 「Text2Mesh」を利用しております。 (https://threedle.github.io/text2mesh/)
※6 NPC の行動を作るために用いられ、キャラクターの思考・行動を階層的に表現するツリー構造上に配置し、行動に至るまでの思考の流れなど視覚的にわかりやすくしたもの。

本件に関する報道機関からのお問合せ先
株式会社 NTT ドコモクロステック開発部 都市デザイン技術開発担当

別紙

本技術の開発概要

1. 目的・ねらい
行動ロジック生成 AI、アニメーション AI、外見生成 AI の自動連携技術を開発し、NPC の自動生成を可能とすることで、メタバース空間内の賑わいをスピーディーかつ安価に創出可能な技術としてサービス提供をめざします。

2. 開発内容
(1) 行動ロジック生成 AI 行動ロジック生成 AI は、各ノード※1 のパラメータをプロンプトに基づき生成し、それらノードを木構造化することでビヘイビアツリーを構築します。ノードパラメータの生成には、Language Large Model (以降、LLM)を活用しています。LLM を用いたノードパラメータ生成に際して、以下工夫をしました。

(工夫①) LLM の出力対象を一つのノードのパラメータに限定
一度の LLM への入出力によって、木構造全体を構成する各ノードのパラメータを生成する場合、LLM の表現能力に応じて、生成可能なビヘイビアツリーの規模に限界が生じます。その障壁を排除するため、 LLM の出力対象を一つのノードに限定しました。

(工夫②) LLM の出力として、子プロンプトを追加
導入に際して、生成処理単位を各ノードに分割することで、木構造を保ったノード生成の困難さが課題となります。これに対して、LLM に出力として子プロンプト※2 を追加し、それを子ノードのパラメータ生成に利用することで解決しました。これによって親ノード・子ノードの構造を保った生成、つまりビヘイビアツリー全体の生成が可能となりました。

以上の工夫によって、LLM の表現能力に関わらず多種多様な NPC の行動ロジックの生成が可能となりました。

(2) 「行動ロジック生成 AI」、「アニメーション生成 AI」、「外見生成 AI」の自動連携
3 つの生成 AI の連携は、①行動ロジック生成 AI とアニメーション生成 AI の連携、②アニメーション生成 AI と外見生成 AI の連携、の 2 つの連携によって実現されています。

① 行動ロジック生成 AI とアニメーション生成 AI の連携
行動ロジック生成の過程でアニメーション生成に必要なプロンプトを生成することで、アニメーション生成のための個別プロンプトの入力を要求せず、簡易かつスムーズな連携を実現しています。

② アニメーション生成 AI と外見生成 AI の連携
外見生成 AI から出力された NPC の 3D モデルに対して、アニメーション生成 AI の出力されるアニメーションに適合する骨格データを自動的に埋め込むツール(リギングツール)を開発し実現しています。

<NPC 自動生成ワークフローイメージ>

3. 背景
メタバース業界は急速に成長し大きな注目を集めている一方で、利用するユーザ数は十分とは言えない状況であり、メタバース提供事業者の課題となっています。そこで、空間内の賑わいを創出し、群集心理の作用によりユーザを惹きつけることに NPC が効果的であると考え、さらに、その NPC を生成 AI を用いることで、誰でも簡単にスピーディーに制作できないかと考え開発しました。

4. メリット
メタバース空間内に NPC を 10 体配置する場合、ビヘイビアツリーの作成およびビヘイビアツリーと NPC のアニメーション・外見の連携には、およそ 42 時間※3 を要するといわれていますが、本技術を利用することで 1 時間程度に削減可能となるため、メタバース提供事業者の課題であった空間内の賑わい創出が、スピーディーに実現可能となります。

5. その他
(1) ノンプレイヤーキャラクター
ゲーム空間を始めとしたメタバース空間に存在するプレイヤーが操作しないキャラクターのことを指します。昨今のメタバース空間における NPC は、ユーザへのインタラクティブな体験価値提供のために、行動ロジックやアニメーション、外見などの要素が実装される傾向にあります。NPC の行動ロジックを規定するビヘイビアツリーについては、人手での開発・設定が必要となることが一般的です。

(2) ビヘイビアツリー
NPC の動作選択の役割を担う中間ノードおよび動作規定の役割を担う末端ノードによって構成され、それらノードを木構造に連ねることで、多様な行動を表現します。行動決定時には、最上位に位置するノードがアクティブ化され、それに連なる中間ノードを介し最終的に末端ノードに到達することで、行動が選択されます。

ゲーム分野ではこれまでバーチャルエージェントの実現および高度化に向けて、その意思決定の役割を果たす行動ロジック(=意思決定アルゴリズム)を表現する手法が数多く生み出されてきました。その中で、ビヘイビアツリーは「Halo2(2004)※4 」での活用を機に、数多くのバーチャルエージェントに導入されました。同手法はその他手法には無い拡張性が支持され、2011 年以降のゲーム領域における行動ロジック表現手法として約 7 割のシェアを獲得するに至ります。メタバース領域においても、NPC の行動ロジックを表現する手法としてビヘイビアツリーが広く利用されています。

※1 NPC が特定の状況に応じて行動を決定する際の選択肢やその行動の内容が定義されたもの。
※2 親ノードのパラメータの生成のために入力されたプロンプトを細分化・再構成したプロンプト。
※3 有識者インタビューに基づく数値です。
※4 2004 年にマイクロソフト社より発売された Xbox 用ゲームソフト。

1602ソフトウェア工学
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