2021-12-21 国立天文台
ふたご座流星群の明るい流星(約マイナス3等)と月明かりに照らされた富士山。2021年12月15日2時25分、山梨県富士河口湖町にて撮影。(クレジット:佐藤 幹哉(国立天文台))※表示画像はトリミングしています。 オリジナルサイズ(7.3MB)
三大流星群の一つ、ふたご座流星群が12月14日に極大を迎えました。夜半過ぎまで満月前の明るい月が空に残り、あまり良い条件ではありませんでしたが、月明かりに負けない明るい流星も見られ夜空をにぎわせました。月が沈んだ後には、暗い空の中で大変多くの流星が見られました。
ここでは、国立天文台の職員が撮影したり、ハワイ観測所や石垣島天文台で撮影されたりした、ふたご座流星群の画像と動画を紹介します。
空から降ってくるように流れる流星
空から降り注ぐように流れたふたご座流星群。2021年12月13日から14日に出現した流星部分を比較明合成。(クレジット:長山 省吾(国立天文台)) オリジナルサイズ(6.6MB)
ふたご座流星群の活動が活発になるこの時期 、深夜1時から2時にかけて、放射点のあるふたご座は、天頂近くに高く昇ります。流星群の流星は、この放射点を中心に四方八方へと流れるように出現するのですが、放射点が天頂近くにあると、まるで天高くから地面へと向かって降り注ぐように流星が流れます。
10秒程度の短い露出で連続して写真を撮影すると、多くの流星を写すことができます。これは、流星部分をアプリケーション上で重ね合わせることで、降り注ぐように流れるたくさんの流星を写し出した画像です。
マウナケアの「星空カメラ」が捉えた流星
すばる-朝日星空カメラ 2021年12月13-14日 流星ダイジェストその2。2021年12月14日2時55分から5時52分に出現した明るい流星を抜粋。(クレジット:国立天文台ハワイ観測所・朝日新聞)※ふたご座流星群以外の流星も含まれています。
すばる望遠鏡のあるハワイ島では、「星空カメラ」が24時間稼動していて、夜にはマウナケア山から見える星空の様子を配信しています。2021年春から稼働したこのカメラがふたご座流星群を迎えるのは、初めてのことでした。
極大日の月が沈んだ後には(上記埋め込み動画がダイジェスト)、わずか数秒にも満たない間に複数個の流星が流れる様子や、地上を照らす程明るく輝くふたご座流星群の火球を写し出し、多くの人の目を楽しませてくれました。
現在もダイジェスト動画が公開されていますので、ふたご座流星群の流れる様子をぜひご覧ください。
ダイジェスト動画
- すばる-朝日星空カメラから 2021年12月11-12日 流星ダイジェスト(Ichi Tanaka)(注)
- すばる-朝日星空カメラから 2021年12月12-13日 流星ダイジェスト(Ichi Tanaka)(注)
- すばる-朝日星空カメラ 2021年12月13-14日 流星ダイジェスト その1 (Ichi Tanaka)(注)
- すばる-朝日星空カメラ 2021年12月13-14日 流星ダイジェストその2(Ichi Tanaka)(注)
※上の埋め込み動画です。
注:ハワイ観測所の研究者で「星空カメラ」の管理者・田中壱さんのチャンネル
石垣島天文台で捉えたふたご座流星群
雲間に出現したふたご座流星群の明るい流星(西側のスカイモニター)。撮影時刻:2021年12月15日2時19分(15秒露出)(クレジット:石垣島天文台(国立天文台)) オリジナルサイズ(3.4MB)
石垣島天文台ではあいにくの悪天候でしたが、天文台の東西にあるスカイモニターの画像が、雲間に流れるふたご座流星群の流星を捉えました。
なお画像の左端の雲間には、東京では南の地平線ぎりぎりにしか見えないりゅうこつ座の1等星、カノープスも写っています。緯度の低い石垣島ならではの風景です。
実際に見られた流星の数
国立天文台職員の観測(山梨県鳴沢村にて)では、2021年12月14日午前2時55分から3時25分の30分間に、25個のふたご座流星群の流星(群流星)の出現が見られたのが最も多い値でした。1時間あたりの流星数に換算すると50個流れたことに相当し、ふたご座流星群は、およそ期待通りに活発に出現した模様です。翌日の夜の観測(山梨県河口湖町)ではこれよりも若干少なめで、12月15日午前0時46分から1時16分の30分間に、16個の群流星(1時間あたり32個)を確認しています。
また東京都葛飾区で観測した職員は、12月15日午前3時15分から4時15分の1時間に、5個のふたご座流星群を数えました。市街地ではやはり見える流星の数が数分の1から10分の1程度に減ってしまうのですが、それでも明るい流星ならば観察できることがわかります。
探査計画が進む母天体
彗星(すいせい)などの天体から放出した塵(ちり)が、まとまって地球大気に突入し、多くの流星となって見られるのが流星群です。この、流星群の起源となる天体のことを「母天体(ぼてんたい)」と言います。多くの流星群では、母天体は彗星なのですが、ふたご座流星群は、その軌道がとてもよく似ていることから、1983年に発見された小惑星フェートン((3200)Phaethon、仮名表記は他にもあります)であることが確定的です。彗星の場合には、太陽に接近して熱を受けることで揮発性物質とともに塵が吹き出しています。しかしながらフェートンでは、ふたご座流星群の元となる多量の塵がどのように放出されたかは、解明されていません。例えば、過去には彗星活動をしていたフェートンが、太陽に何度も接近するうちに揮発物質がなくなり、塵やガスを吹き出さなくなって現在の小惑星のような姿になったという説もありますが、確かめられていないのが現状です。
このようなフェートンに探査機を接近させ、詳細に探査をする計画「DESTINY+(デスティニー・プラス)」が日本の研究機関によって進められています。ふたご座流星群の母天体について新たな知見が得られることが期待されます。
次に見られる流星群について
ふたご座流星群とともに三大流星群の一つとされるしぶんぎ座流星群が、年が明けてすぐの2022年1月4日未明(1月3日深夜過ぎ)に極大を迎えます。月明かりの影響が無く、また予想される極大時刻が日本で観測条件の良い明け方にあたるため、多くの流星が見られることが期待されます。国立天文台ウェブサイトの「ほしぞら情報(2022年1月)」に詳しい情報がありますので、ぜひご覧ください。
また、国立天文台のウェブサイトの「基礎知識」の「流星群」では、毎年見られる主な流星群を紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
毎年見られるような流星群では、極大の日に流星の数が増えることがわかっています。しかしながら、「その日の○時○分○秒に、こちらの空に流れます」というような詳細な予報をすることは、今もってできないのが現状です。逆に言えば、星空を眺めている時はいつでも、偶然流星が現れるかもしれないのです。星空を見る次の機会には、「流星が流れないかな?」と、ほんの少し長めの時間夜空を見上げてみませんか。
文:佐藤 幹哉(国立天文台天文情報センター)