2021-11-09 国土地理院
全国の地殻変動概況
国土地理院が全国に展開している電子基準点等のGNSS連続観測網(GEONET)の観測結果から求めた、2021年9月下旬から2021年10月下旬までの1か月間の地殻変動概況は、別紙1~7のとおりです。東北地方を中心に、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震後の余効変動が見られます。
火山周辺では、硫黄島において地殻変動が見られます。
トピックス
- GNSS観測によると、2020年夏頃から紀伊半島西部・四国東部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。この変動は、紀伊水道周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。(別紙8)
- GNSS観測によると、2019年春頃から四国中部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。この変動は、四国中部周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。(別紙9)
- GNSS観測によると、2020年夏頃から九州南部で観測されている、それまでの傾向とは異なる地殻変動は、2021年春頃に鈍化したまま、現在もその状態が続いているように見えます。この変動は、日向灘南部のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。(別紙10)
- 石川県能登地方では、GNSS観測によると、2020年12月頃から「能都」で南南西方向の変動が、「珠洲」で隆起が見られるなど、この地域の地震活動とほぼ同期して地殻変動が観測されています。 (別紙11)
- 硫黄島では、「硫黄島1」及び「M硫黄島A」で隆起が、「硫黄島2」で南向きの変動が継続しています。(別紙12)
- 阿蘇山では、阿蘇山を取り囲む基線で2021年9月頃からわずかな伸びが見られます。なお、10月20日11時43分に発生した阿蘇山の中岳第一火口での噴火に伴う顕著な地殻変動は、観測されていません。だいち2号によるSAR干渉解析結果によると、中岳の火口周辺に火山噴出物によるものとみられる非干渉領域が見られます。(別紙13)
- 桜島周辺では、鹿児島(錦江)湾を挟む「垂水」-「隼人」の基線で2021年1月上旬から見られたわずかな伸びは、2021年6月頃から停滞しています。「鹿児島郡山」-「鹿児島福山」の基線で2020年8月頃から見られたわずかな伸びは、2021年3月頃から停滞しています。桜島島内の基線の変動は2020年4月頃から停滞しています。(別紙14)
- 薩摩硫黄島では、顕著な地殻変動は観測されていません。(別紙15)
- 口永良部島では、顕著な地殻変動は観測されていません。(別紙16)
- 諏訪之瀬島では、顕著な地殻変動は観測されていません。(別紙17)
補足説明
- 全国の1年間(2020年10月下旬から2021年10月下旬まで)の地殻変動からは、以下のような傾向が見られます。(別紙18)
- 東北地方を中心とした広い範囲で、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震後の余効変動が見られます。
- 硫黄島では、島内の地殻変動が見られます。
- その他の地方では、プレート運動による定常的な地殻変動が見られます。
参考
- 8月13日からの火山活動により新島が確認された福徳岡ノ場周辺を、だいち2号及びLandsat-8の観測した衛星画像を解析し、新島の形状、大きさ等を明らかにしました。
Landsat-8での11月5日の画像では、西側の陸地は、10月4日と10月20日に比べて陸地の形が変わったものの、面積に大きな変化はありません。一方、東側の陸地は見られません。だいち2号の10月18日のSAR強度画像では、10月13日と比べて大きな変化は見られません。(別紙19)
別紙一覧
別紙8 紀伊半島西部・四国東部の非定常的な地殻変動 (PDF形式:1.1MB)
別紙9 四国中部の非定常的な地殻変動 (PDF形式:1.4MB)
別紙10 九州地域の非定常的な地殻変動 (PDF形式:1.2MB)
別紙11 石川県能登地方の地震活動時の観測データ (PDF形式:323KB)
別紙15 薩摩硫黄島周辺の地殻変動 (PDF形式:387KB)
別紙16 口永良部島周辺の地殻変動 (PDF形式:347KB)
別紙17 諏訪之瀬島周辺の地殻変動 (PDF形式:419KB)
別紙18 全国の地殻変動(水平)-1年間- (PDF形式:992KB)
別紙19 福徳岡ノ場の衛星画像解析結果 (PDF形式:935KB)
問い合わせ先
国土交通省国土地理院
地理地殻活動研究センター 地理地殻活動総括研究官 黒石 裕樹
測地観測センター 地殻監視課長 仲井 博之
測地観測センター 地震調査官 和田 弘人