AIと材料研究者のコラボで耐熱材料を強くする~AIの一見奇抜な「手」から納得の熱処理法を考案~

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2023-09-25 物質・材料研究機構 (NIMS)

NIMSと名古屋大学からなる研究チームは、人工知能 (AI) と材料研究者の共同作業で、Ni-Al合金の高温強度を従来よりも向上できる新しい二段熱処理法を考案しました。

概要

  1. NIMSと名古屋大学からなる研究チームは、人工知能 (AI) と材料研究者の共同作業で、Ni-Al合金の高温強度を従来よりも向上できる新しい二段熱処理法を考案しました。AIが発見した優れた熱処理パターン群を材料研究者が分析し、材料学的なエッセンスを抽出することで、より高い強度を実現できる熱処理パターンが得られました。本成果は、マテリアル分野においてAIと材料研究者のコラボで新しい考え方が生まれることを示す事例と言えます。
  2. Ni-Al合金はγ相とγ’相で構成され、高温強度を向上するためにはγ’相のサイズと体積率を適正な値に制御する必要があります。γ’相のサイズと体積率は熱処理の条件で決まりますが、温度と保持時間の組み合わせで構成される熱処理のパターンは膨大で、例えば、全時間を10等分し、温度を9水準とした場合、熱処理パターンの数は約35億 (9の10乗) 通りにもなります。そのため温度を一定にした等温熱処理に限定して検討がなされてきました。これまでに研究チームは実験を計算シミュレーションに置き換えて試行錯誤の時間とコストを減らしてきましたが、それでも35億のパターン全てを計算することは現実的ではありませんでした。
  3. 今回、研究チームは、膨大な組み合わせから最適パターンを効率的に探索するAIアルゴリズム、モンテカルロ木探索を用いることで、等温熱処理を凌駕する110通りの熱処理パターンを発見しました。発見されたパターンは一見複雑で (図) 、人間には思いつかない奇抜なものばかりでしたが、詳しく分析すると理にかなっていることがわかりました。AIが発見したパターンは、高温短時間でγ’を適正なサイズの手前まで成長させたのち、低温長時間で適正サイズを超えない様に成長を抑えつつ体積率を上げていることがわかったのです。ここから着想を得て、高温短時間と低温長時間を組み合わせる二段熱処理を考案し、AIが発見したパターンよりもさらにNi-Al合金の高温強度を向上できる熱処理法を設計しました。
  4. 本手法を、今後、より実用的なニッケル基超合金へ適用し、ガスタービンの燃費向上に貢献することを目指します。
  5. 本研究は、NIMS技術開発・共用部門の出村雅彦部門長、源聡副プラットフォーム長、マテリアル基盤研究センターのVickey Nandal NIMSポスドク研究員、ディープ冴研究員、構造材料研究センターの長田俊郎主幹研究員、Dmitry S. Bulgarevich NIMS特別研究員、名古屋大学の小山敏幸教授によって行われました。本研究の一部は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) 「革新的構造材料」「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」の支援のもと、NIMS構造材料DX-MOPの枠組みにて行われました。
  6. 本研究成果はScientific Reports誌に2023年8月4日 (Vol. 13, Article number 12660) に掲載されました。

AIと材料研究者のコラボで耐熱材料を強くする~AIの一見奇抜な「手」から納得の熱処理法を考案~

プレスリリース中の図 :AIと材料研究者の共同作業で考案した新しい二段熱処理法



掲載論文

題目 : Artificial Intelligence Inspired Design of Non-Isothermal Aging for γ – γ’ Two- phase Ni-Al Alloys
著者 : Vickey Nandal, Sae Dieb, Dmitry S. Bulgarevich, Toshio Osada, Toshiyuki Koyama, Satoshi Minamoto, Masahiko Demura
雑誌 : Scientific Reports
掲載日時 : 2023年8月4日
DOI : 10.1038/s41598-023-39589-2

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