2023年8月の地震活動の評価

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2023-09-11 地震調査研究推進本部地震調査委員会

1.主な地震活動
目立った活動はなかった。

2.各領域別の地震活動
(1)北海道地方
○ 8月 19 日に十勝地方南部の深さ約 50km でマグニチュード(M)5.1 の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

(2)東北地方
○ 8月 11 日に青森県東方沖の深さ約 30km で M6.2 の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 8月 25 日に三陸沖の深さ約 15km で M6.0 の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。今回の地震の震源付近では、M6.0 以上の地震がしばしば発生している。また、例えば 1989 年 10 月 27 日に M6.2 と M6.1 の地震が発生しその2日後に M6.0 と M6.5 の地震が、6日後に M7.1 の地震が発生するなど、M6.0 以上の地震が続いて発生した事例がある。

(3)関東・中部地方 ○ 2018 年頃から地震回数が増加傾向にあった石川県能登地方の地殻内では、 2020 年 12 月から地震活動が活発になっており、2021 年7月頃からさらに活発になった。2020 年 12 月1日から 2023 年9月8日 08 時までに震度1以上を観測する地震が 471 回発生するなど、地震活動が活発な状態が継続している。
一連の地震活動において最大の地震は、2023 年5月5日 14 時 42 分に能登半島沖(*1)で発生した M6.5 の地震である。M6.5 の地震発生以前の地震活動は、主に能登半島北東部の陸域及び沿岸域付近で発生していた。M6.5 の地震の発生以降は、地震の活動域はさらに北から東側の海域にも広がっている。8月1日以降も9月8日 08 時までに最大震度1以上を観測した地震は 10 回発生しており、このうち最大の地震は8月3日に発生した M3.4 の地震である。地震活動は時間の経過とともに減衰し、全体として地震の発生数は概ね M6.5 の地震が発生する前の状況に戻っている。
GNSS観測の結果によると、2020 年 12 月頃から M6.5 の地震が発生するまでに、石川県珠洲(すず)市で水平方向に1cm を超える移動及び上下方向に4cm 程度の隆起が見られるなど、地殻変動が観測されていた。また、GNSS観測や陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると、M6.5 の地震に伴って、震央周辺で最大 20 ㎝程度の地殻変動が見られた。M6.5 の地震後に複数の観測点で見られていた地震前の傾向とは異なる変動が最近では鈍化し、M6.5 の地震前の傾向に戻りつつあるように見える。
これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、一連の地震活動は当分続くと考えられる。強い揺れや津波には引き続き注意が必要である。

(4)近畿・中国・四国地方
○ 8月 26 日に周防灘の深さ約 75km で M4.6 の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に張力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。

(5)九州・沖縄地方
○ 8月7日に大隅半島東方沖の深さ約 20km(CMT 解による)で M5.4 の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ型であった。

(6)南海トラフ周辺
○ 南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない。

補足(9月1日以降の地震活動)
○ 9月5日に千葉県北西部の深さ約 70km で M4.6 の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
○ トカラ列島近海(小宝島付近)では、9月8日 02 時頃からまとまった地震活動があり、11 日 00 時 02 分の M5.3(速報値)の地震が発生するなど、9月8日から9月 11 日 08 時までに、震度1以上を観測する地震が 287 回、震度3以上を観測する地震が 25 回発生した。
今回の地震活動域の周辺では、2021 年 12 月に最大で M6.1 の地震が発生し最大震度5強を観測した。2021 年 12 月に震度1以上を観測した地震が 308 回発生するなど、過去にも活発な地震活動が継続したことがある。当分の間、強い揺れに注意が必要である。

*1:気象庁が情報発表で用いた震央地名は「石川県能登地方」である。注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。

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1702地球物理及び地球化学
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