2023-08-22 大阪大学,科学技術振興機構
ポイント
- 複雑なアモルファス構造の持つエネルギーを、トポロジカルデータ解析とシンプルな機械学習モデルの組み合わせで高精度に予測できることを発見した
- アモルファス構造を特徴付ける原子のつながり方の情報を抽出することが従来方法では困難であったが、トポロジーを応用することで可能になった
- アモルファスを始めとする不規則系に対する高効率なシミュレーション手法へのさらなる展開が期待される
大阪大学 産業科学研究所の南谷 英美 教授、岡山大学 AI・数理データサイエンスセンターの大林 一平 教授、東京大学 大学院工学系研究科の清水 康司 助教・渡邉 聡 教授からなる研究グループは、トポロジーの情報と機械学習を組み合わせることで複雑なアモルファス構造のエネルギーを予測する新規手法を開発しました。
アモルファスは太陽電池やコーティング材料など幅広く応用されている材料です。その複雑な構造と物理的性質や機能の相関を解明するためには、新たなシミュレーション手法の開発が不可欠です。現在、最も有力な手法は、高精度な量子化学計算を再現する代用モデルを機械学習によって作成する機械学習ポテンシャルと呼ばれるものです。しかし、アモルファス構造の特徴をどのように機械学習モデルの入力データに反映するかという点が課題でした。
今回、南谷教授らの研究グループは、トポロジーという数学理論に基づくトポロジカルデータ解析を応用することにより、アモルファス構造内の原子のつながり方の情報をより直接的に機械学習モデルに入力し、シンプルなモデルでもエネルギーの予測が可能であることを発見しました。これにより、複雑な構造を持った物質に対する高効率なシミュレーション技術の発展が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「The Journal of Chemical Physics」に、2023年8月22日(火)(現地時間)に公開されます。
本研究は、以下の研究費の助成を受けて実施されました。
- 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
JPMJPR2198(力学機能のナノエンジニアリング 領域)
JPMJPR1923(数学と情報科学で解き明かす多様な対象の数理構造と活用 領域) - 科学研究費補助金
23H04470、23H04100、22H05106、21H01816、21H05552、20H05884、19H02544、19H00834
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(814KB)
<論文タイトル>
- “Persistent homology-based descriptor for machine-learning potential of amorphous structures”
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
南谷 英美(ミナミタニ エミ)
大阪大学 産業科学研究所 教授
<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
大阪大学 産業科学研究所 広報室
科学技術振興機構 広報課