2023-06-14 京都大学
雑草の管理には除草剤が利用されますが、同じ除草剤が繰り返し利用されると雑草が除草剤に抵抗性を獲得することがあります。中でも、除草剤を解毒することで抵抗性を獲得した「解毒型抵抗性」雑草は、化学骨格が異なる複数の除草剤に対して1個体が同時に抵抗性(多剤抵抗性)を示し、効果的な除草剤がほとんど残っていないケースも知られています。しかし、作物栽培において脅威となるこうした抵抗性の詳細なメカニズムはこれまでほとんど分かっていませんでした。
岩上哲史 農学研究科助教、宮下正弘 同准教授、須田宏栄 同修士課程学生(研究当時)、久保朋美 同博士課程学生らの研究グループは、米国で見つかった多剤抵抗性を示す強害雑草タイヌビエを解析し、多剤抵抗性は除草剤を解毒する複数の酵素遺伝子の一斉活性化によることを明らかにしました。近年日本で見つかった多剤抵抗性タイヌビエも類似のメカニズムを獲得していたことから、タイヌビエでは「一斉制御型の解毒型抵抗性」が生じやすいと考えられました。
本研究成果は、2023年5月17日に、国際学術誌「Plant Physiology」にオンライン掲載されました。
上)雑草がしっかり管理された水田。下)タイヌビエが蔓延した水田。収量が大きく低下する。
研究者のコメント
「本研究で扱ったカリフォルニアの多剤抵抗性タイヌビエは1997年に発見され、メカニズム解析が続けられてきたものです。私たちはできるだけ多くのタイヌビエを解析し、抵抗性進化についてメカニズムの多様性や一般性を解明したいと考えています。除草剤の効かないタイヌビエを見かけたらぜひお知らせください。」(岩上哲史)
「私は雑草における除草剤抵抗性のメカニズムを解析することで、人間が与える強烈な選択圧『除草剤』に対して『植物がどのように適応進化するのか』を明らかにしたいと思っています。これまでの研究では、個々の集団を対象にしたメカニズム解析が主流でしたが、私は集団間でメカニズムを比較して、抵抗性を駆動する進化的背景に迫っていきたいです。」(久保朋美)
詳しい研究内容について
雑草が獲得した最強の除草剤抵抗性メカニズムの解明―解毒酵素の一斉活性化―
研究者情報
研究者名:岩上 哲史
研究者名:宮下 正弘