縺(もつ)れ結晶で現れる多重超伝導状態の性質を解明

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2023-04-20 京都大学

尾方司貴 理学研究科修士課程学生(研究当時)、金城克樹 同博士課程学生(研究当時)、北川俊作 同助教、石田憲二 同教授の研究グループは、ドイツのマックス・プランク研究所(MPI)ドレスデンのグループと共同で、局所的に空間反転対称性が破れた「縺れ」結晶に起因した特殊な多重超伝導相の微視的性質を世界で初めて明らかにしました。

近年、特殊な結晶構造が生み出す超伝導状態や磁気状態に注目が集まっています。CeRh2As2は、結晶構造自身は空間反転対称性をもっていますが、超伝導や磁気的性質に重要なセリウム原子サイトでは空間反転対称性が破れている特殊な結晶構造(縺れ結晶)を有しています。このような結晶では、結晶構造に起因した副格子の自由度によって2種類の超伝導状態が実現することが栁瀬陽一 理学研究科教授のグループの理論から指摘されていました。ごく最近になって、MPIドレスデンのグループから理論と比較可能なCeRh2As2の発見が報告されたものの、その超伝導状態の性質については報告されていませんでした。

本研究グループは、CeRh2As2に対して超伝導状態のスピン磁化率を測定し、2種類の超伝導状態が共にスピン一重項超伝導であることを明らかにしました。さらに、超伝導相内部に現れる反強磁性が低磁場の超伝導1相とのみ共存することも発見しました。

本研究成果は、磁場に対して強い超伝導状態を実現する上で重要な知見を提供することが期待でき、複数の超伝導相を持つ新しい材料やその潜在的な応用の探求につながる可能性があります。

本研究成果は、2023年4月20日に、国際学術誌「Physical Review Letters」誌にオンライン掲載されました。さらに、本論文はEditors’ suggestion(注目論文)にも選定されました。

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今回の研究で明らかにしたCeRh2As2超伝導相図

研究者のコメント
「CeRh2As2は、110年以上の超伝導研究の中で初めて見つかった副格子自由度に起因する超伝導多重相をもつ物質です。また、超伝導1相の内部のみに反強磁性秩序が実現する点も非常に珍しいです。多彩な物理が躍動する縺れ結晶をもつCeRh2As2の超伝導に今後もご注目ください。」(北川俊作)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:北川 俊作
研究者名:石田 憲二

書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.130.166001
【書誌情報】
Shiki Ogata, Shunsaku Kitagawa, Katsuki Kinjo, Kenji Ishida, Manuel Brando, Elena Hassinger, Christoph Geibel, Seunghyun Khim (2023). Parity Transition of Spin-Singlet Superconductivity Using Sublattice Degrees of Freedom. Physical Review Letters, 130(16):166001.

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