高分子微粒子を活用した新たなマテリアルリサイクルを実現 ~材料の劣化がなく高品質、安定性と分解性を両立~

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2023-03-22 信州大学,科学技術振興機構

ポイント
  • リサイクル前後で高分子材料の特性が劣化しないリサイクル方法(クローズドループリサイクル)の確立が望まれています。
  • 一般的に、高分子材料の力学特性を向上させると分解性は低下する関係にあるため、力学特性に優れた高分子材料のリサイクルは難しく、解決方法が求められています。
  • 本研究では、高分子の鎖を数十から数百ナノメートル程度のサイズに微粒子化し、それらを集積して高分子フィルムを形成することで、フィルムの強靭性と優れた分解性の両立が可能であることを発見しました。
  • 微粒子から成るフィルムは、特別な化学反応を必要とせずに、溶媒に浸すだけで元の微粒子まで分解することができ、さらに繰り返し使用することができます。微粒子を活用することで、品質劣化のない理想的なクローズドループリサイクルを簡便に実現することができます。

科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CRESTにおいて、信州大学 学術研究院(繊維学系)の鈴木 大介 准教授らの研究グループは、高分子微粒子を活用したマテリアルリサイクル手法を開発しました。本手法は、高分子を分解するときに特別な化学試薬や高圧/高熱などの過酷な分解条件を必要とせず、使用済みの高分子材料を溶媒に浸すだけで元の微粒子まで分解可能です。微粒子材料は機能性材料として何度も再利用でき、使用用途に合わせてフィルムの色や力学特性を調整することができるため、幅広い用途で使用されている高分子材料への適用が期待されています。高分子材料をその原料であるモノマーまで分解する既存の高分子リサイクル手法では、リサイクル後の高分子の特性の劣化や、厳しい化学反応条件を必要とすることが課題でしたが、本手法では、高分子材料をモノマーまで分解することなく、高分子“微粒子”までの分解で留めるというアイデアにより、化学反応を要さず、また再利用時の材料の劣化もなくリサイクルが可能になりました。本発見は、高分子材料のリサイクルに関する世界的な課題を解決する可能性を秘め、既存の高分子マテリアルリサイクルの概念を変える新しい低エネルギーかつ高品質・高効率なリサイクル方法であると言えます。

本成果は英国化学会「Green Chemistry」誌へ日本時間3月22日(英国時間3月21日)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(JPMJCR21L2)(研究代表者:鈴木 大介)の支援のもと行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Closed-loop Recycling of Microparticle-based Polymers”
DOI:10.1039/d3gc00090g
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
鈴木 大介(スズキ ダイスケ)
信州大学 学術研究院(繊維学系) 化学・材料学科 先鋭材料研究所 准教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
信州大学 繊維学部 広報室
科学技術振興機構 広報課

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