リアルタイムに低温積算時間の実況と予測値を表示~スマホで果樹の促成栽培管理を支援~

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2023-01-23 農研機構

ポイント

農研機構は、果樹の促成栽培において資材被覆時期や加温開始時期の判断などの栽培管理を支援できる「果樹の低温積算時間表示システム」を本日公開しました。本システムは、農研機構メッシュ農業気象データから配信される気温データを使用しており、任意の地点の低温積算時間の到達日等を正確に表示します。スマホやPCのWebブラウザ上で簡単に操作でき、登録すれば誰でも無料で利用することができます。

概要


図1 「果樹の低温積算時間表示システム」のWebページ

農研機構は、メッシュ農業気象データシステム1)により配信される毎時気温情報をもとに、露地の低温積算時間2)を計算して表示するWebページ「果樹の低温積算時間表示システム」を本日公開しました(図1)。本システムは、Webブラウザ画面上で、①低温積算時間の実況を知りたい地点と起算日を指定すると、この地点の2月末日までの低温積算時間毎の到達日と到達予測日を表示、②都道府県と日付を指定すると、低温積算時間のヒートマップを都道府県毎に表示できます。

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https://fruitforecast.jp/
低温積算時間アイコンより、果樹の低温積算時間表示システムへ移動

関連情報

予算 : 運営費交付金

問い合わせ先など

研究推進責任者 :
農研機構 果樹茶業研究部門 所長生駒 吉識
同 農業情報研究センター センター長中川路 哲男

研究担当者 :
同 果樹茶業研究部門 果樹生産研究領域 上級研究員杉浦 裕義
同 農業情報研究センターデータ研究推進室 上級研究員稲冨 素子
(現 同 農業環境研究部門 気候変動緩和策研究領域)

広報担当者 :
同 果樹茶業研究部門 研究推進部 研究推進室 果樹連携調整役加藤 秀憲

詳細情報

開発の社会的背景および研究の経緯

モモ、ナシなどの落葉果樹が春に萌芽するためには、それに先立つ秋冬季に、ある温度範囲の低温に、一定時間以上さらされる必要があります。樹種によって萌芽に必要な低温の範囲やそのさらされる時間(以下、低温積算時間)は異なります。従来、7.2°C以下の低温に何時間以上さらされると萌芽できるかを一つの目安とし、促成栽培3)における保温資材の被覆時期や加温の開始時期の判断など栽培管理に利用してきました。

近年の秋冬季の温暖化傾向で、萌芽に必要な低温積算時間の到達時期が以前より遅くなることにより、これまでの経験則が通じなくなってきています。また加温用燃焼資材の高騰が続き、促成栽培における効率的な加温開始時期の判断がますます重要となってきています。

これまで、公設試験研究機関や地域の普及機関等は、独自に観測する気温や最寄りのアメダスの気温のデータを利用して、各々低温積算時間を計算してきました。しかし、近くに観測地点がない園地では、計算値が実際と異なる場合があり、園地毎に、より正確な低温積算時間を把握したいという要望がありました。

一方、農研機構は、1km四方の大きさの領域(基準地域メッシュ)を単位に日平均気温や日積算降水量などの日別の気象データをオンデマンドに提供するメッシュ農業気象データシステムを運用してきました。2021年1月より新たに気温の時別値(以下、毎時気温)の過去値および9日先までの予測値の配信を開始し、これまで日最高・最低気温などから推定していた毎時気温情報をメッシュ単位で直接利用可能になったことから、このデータを利用して、容易かつ正確な露地における低温積算時間を予測できるシステムの開発に取り組みました。

研究の内容・意義

メッシュ農業気象データの気温データ過去値および予測値を利用して、スマートフォンやPCなどの端末のWebブラウザで閲覧できる「果樹の低温積算時間表示システム」を開発しました(図1)。本システムは、簡単な操作により果樹の促成栽培に有用な低温積算時間に関する情報を得ることができます。

①地点の実況と予測

  • 画面上の地図から任意の地点を選んで”計算実行”をタップすると(図2)、低温積算時間現在値を表示(図3中央)
  • 2月末日まで200時間毎の低温積算時間の到達日と到達予測日を表形式で表示(図3右側)
  • GPS機能があるスマホ等では現在位置の指定可能
  • 低温として積算を行う基準温度は変更可能(初期設定は7.2°C)
  • 起算日は10月~2月の範囲で変更可能(初期設定は当年度の10月1日)

②実況地図の表示

  • 都道府県と日付を指定して”ダウンロード”をタップすると(図4)、都道府県単位でヒートマップ化された低温積算時間の実況地図を表示(図5)
  • 年は2019年度以降で選択
  • 日付は10月~2月で1週間毎に選択
  • 実況地図はPNGファイル形式

これまでは経験に基づき暦日で決めていた加温開始時期について、低温積算時間の実況を地点毎にリアルタイムで把握できることにより低温積算時間をもとに適切に判断できるようになります。その結果、萌芽・開花までの加温期間の短縮による省エネ効果が期待されるとともに萌芽率の向上や斉一化による安定生産に貢献します。さらに実況地図は、過去の低温積算時間の推移から、加温開始時期の見直しに利用できるほか、低温積算時間を基準とした栽培適地の再考にも利用できます。

今後の予定・期待

農研機構果樹茶業研究部門では、生育予測モデルや農業気象データ等を活用して、適期栽培管理を支援する動的な栽培暦の提供や果実品質予測による栽培管理へのフィードバックなど、データ駆動型の生産システムの開発に取り組んでいます。そのファーストステップとして、低温積算時間の情報提供の試用を始めました。本システムの運用により、データ駆動型の生産技術のニーズを拾い上げ、頂いたご意見をもとに、今後、本システムを拡充する予定です。

用語の解説
1)農研機構メッシュ農業気象データシステム
農業現場向けの気象情報として、農研機構が開発・運用する気象データサービスのこと。1km四方の大きさの領域メッシュ毎に日平均気温などの気象データの過去値および平年値の他、当日から最長26日先まで日別の気象予報値などを提供している。このシステムは、WAGRIを通してデータを取得できるよう整備されているが、試験研究に限っては登録すれば無料で利用できる。
2)果樹の低温積算時間
ある温度(一般的に7.2°C)以下に樹がさらされた時間を積算したもの。萌芽に必要な低温積算時間(または低温要求時間ともいう、連続した低温でなくてよい)は、樹種や地域によって異なるが、「果樹農業振興基本方針」(農林水産省令和2年度版)では、オウトウで1400時間以上、モモで1000時間以上、二ホンナシ(幸水)で800時間以上、ブドウ(巨峰)で500時間以上とされている。
3)促成栽培
施設等を用いた保温により、自然条件下での栽培に比べ早期に収穫する栽培法のこと。単に樹を被覆資材で覆うだけのものから、被覆資材を二重にし、積極的に加温して収穫期をよりいっそう早期化させるなど様々な作型がある。早期収穫による有利販売のほか、開花期や収穫期のコントロールによる品質向上や労力分散などのメリットがある。
参考図


図2 低温積算時間を計算させるための設定画面(地図で地点を選び、計算を開始したい日付を指定し、実行すると、低温積算時間が計算される)


図3 低温積算時間の表示(現在値および200時間毎に低温積算時間の到達日(青字)と到達予定日(赤字)が表示される)


図4 低温積算時間をヒートマップ化した実況地図をダウンロードするための設定画面


図5 広島県における2021年10月1日~2022年1月10日の低温積算時間の現況マップ(縦軸は緯度(度)、横軸は経度(度)、図横のカラーバーは7.2°C以下の低温積算時間(時間))

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