2022-05-05 アメリカ合衆国・ライス大学
・ ライス大学、香港城市大学 (CityU)、台湾国立聯合大学、台湾中央研究院および国立台湾大学から成る研究チームが、短い波長の紫外線 A(UV-A)を真空紫外線(vacuum UV: VUV)に変換するメタレンズを開発。
・ 波長範囲が 100~200nm の VUV は大気に吸収され、その名の示す通り真空のみで伝搬する。通常は真空チャンバー等の特殊な環境や、VUV の発光・集光機器が必要となる。
・ 半導体製造、光化学や材料科学で使用される VUV の発生源は、大型、高価で輸出規制のある非線形結晶。また、VUV は発光後の処理が高コストで、商用の VUV システムは冷蔵庫ほどの大型で価格は数万ドルにものぼる。
・ 過去の研究では、第二次高調波発生と呼ばれる周波数の倍増プロセスを通じ、酸化亜鉛のメタ表面による 394nm の UV から 197nm の VUV への変換を実証しているが、集光無しのためメタ表面には複雑なパターンが不要であった。
・ 新メタレンズは、紙よりも薄い透明酸化亜鉛シートに数百個の微細な三角柱ナノレゾネーターを同心円状にエッチングしたもの。394nm の UV を 197nm の VUV に変換すると同時に 1.7 ミクロンの直径のスポットに集光し、出力密度を 21 倍増加させる。
・ 微細なレゾネーターと酸化亜鉛シートの界面が、光の移動速度と方向の位相を変化させる。電気力学の働きを利用して光の方向を界面で変化させるため、出力光の集光が不要となる。
・ メタレンズ技術は可視光波長領域で極めて効率的となるため、VR ヘッドセットで使用されている。近年では可視光と赤外波長で実証されているが、より短い波長での実証は今回が初めてとなる。
・ 新技術は基礎的段階ではあるが、小型の VUV オプティカルコンポーネントやデバイスの大量製造手段を指し示すもの。現在最高水準の VUV システムとの競合はまだ先となるが、大きな可能性が期待できる。
・ 本研究は、台湾科学技術部(MOST)、台湾大学、深圳市科技創新委員会、香港特別行政区の大学助成金審議会/研究助成金審議会、広東省科学技術庁、香港城市大学電気工学部、台湾教育部のYuhan Young Scholar Program、台湾中央研究院応用科学研究センター、ロバート・A・ウェルチ財団、米
国立科学財団(NSF)、米国空軍科学研究局(AFOSR)および米国国防脅威削減局(DTRA)が資金を提供した。
URL: https://news.rice.edu/news/2022/rice-metalens-could-disrupt-vacuum-uv-market
<NEDO海外技術情報より>
関連情報
Science Advances 掲載論文(フルテキスト)
Vacuum ultraviolet nonlinear metalens
URL: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn5644