2021-11-22 京都大学
固体物質中の電子輸送のしくみを量子力学によって理解し制御することは、電子デバイスを開発する上で重要であると同時に、また、一般に固体物質の特性は電子の伝導度に反映されるので、基礎研究においても非常に重要です。
一方、近年のレーザー技術の発展により実現可能となった、数十ナノケルビンまで冷却された原子集団は、量子状態を高精度に制御できる系として注目されています。この冷却原子を用いて、量子輸送を研究する可能性が近年大変注目され、アトム(原子)とエレクトロニクス(電子工学)を合わせてアトムトロニクスと呼ばれ、盛んに研究されています。
小野滉貴 理学研究科特定研究員、高橋義朗 同教授、西田祐介 東京工業大学准教授らのグループは、冷却原子を用いた新奇な量子輸送系を確立しました。本研究はアトムトロニクスの新たなプラットフォームを確立し、今後の研究で輸送現象に関するさらなる理解が期待されます。
本研究成果は、2021年11月18日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
図:実験の概念図。電子軌道Sの原子とPの原子を用意する。P軌道原子によってS軌道原子のスピンと呼ばれる原子の内部状態が変化するのを仮想空間上の「流れ」とみなすのが本研究のアイデアである。
研究者情報
研究者名:高橋義朗
メディア掲載情報
日刊工業新聞(11月22日 19面)に掲載されました。