電気抵抗のない高温超電導接合で 2年間の永久電流運転に世界で初めて成功

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2021-09-24 理化学研究所,ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社,株式会社JEOL RESONANCE,科学技術振興機構

非常に低い温度に冷やされた物質の電気抵抗がゼロとなる「超電導」現象は、エネルギーロスの小さい送電線やリニアモーターなどへの応用が進められています。「永久電流」は、超電導状態にあるコイルに、外部からの電流供給なしで電気が流れ続ける現象で、これにより発生する強力な磁場を利用したのが核磁気共鳴(NMR)装置です。NMR装置は、外部電源で超電導コイルに電流を供給したのち、コイルを電源から切り離して回路を閉じることで、永久電流運転に移行します。この際、コイル部分の超電導線材だけではなく、スイッチなどの接合部分も超電導状態でなければならないため、「超電導接合」の技術が不可欠です。近年、液体ヘリウム温度(マイナス269度)で超電導状態になる「低温超電導」に対して、液体窒素温度(マイナス196度)でも超電導状態になる「高温超電導」の広い実用化が求められています。その中で、高温超電導線材は、液体ヘリウム温度にまで冷やせば、低温超電導線材よりはるかに高い磁場を発生させることができるため、高温超電導線材の超電導接合(高温超電導接合)を使った次世代超高磁場NMR装置の実現が期待されています。しかし、高温超電導線材はもろく取り扱いが難しいため、高温超電導接合には技術的困難が多いのが課題です。

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 機能性超高磁場マグネット技術研究ユニットの柳澤 吉紀 ユニットリーダー、構造NMR技術研究ユニットの山崎 俊夫 ユニットリーダー、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社の斉藤 一功 取締役/CTO、日本電子株式会社の連結子会社である株式会社JEOL RESONANCEの蜂谷 健一 リーダー、科学技術振興機構の前田 秀明 プログラムマネージャーらの共同研究グループは、2018年に、高温超電導接合を実装したNMR装置の開発に世界で初めて成功しました。このNMR装置の2日間の磁場変化を観測したところ、理論上はコイルを冷やし続ければ外部電源なしで10万年間も磁場が発生し続ける性能を示し、通常NMR装置に求められる基準をクリアしていました。しかし高温超電導線材を構成する脆い銅酸化物が原子レベルでつながる接合部が、長期間にわたり永久電流を保持できるかは明らかでありませんでした。

今回、共同研究グループは、400メガヘルツ(MHz)の磁場で約2年間絶え間なく永久電流運転し、磁場の精密測定を続け、高温超電導接合が長期間にわたって安定的な永久電流を維持できることを初めて実証しました。1時間当たりの磁場の変化率は、2018年当時の1時間当たり10億分の1レベルから、時間と共にさらに小さくなり続け、2年目にはわずか1時間当たり300億分の1になりました。これは、電流を供給しなくても300万年も磁場が発生し続けることを示します。

NMR装置は10年以上にわたり永久電流を安定に維持する必要がありますが、これまで高温超電導接合を実装したNMR装置では数日間の永久電流運転の例しかありませんでした。今回の成果で、年単位の永久電流保持に成功したことは、高温超電導接合を実装したNMR装置の実用化に向けて重要な成果であると言えます。

また、高温超電導接合を実装した液体ヘリウムで冷却する超高磁場のNMR装置においては、直流電源から電流を供給し続ける従来方式に比べ、液体ヘリウムの蒸発が1桁以上小さくなります。さらに技術を発展させることで、将来的には、希少で高価な液体ヘリウムを使用しない小型で汎用性の高いNMR装置の開発も可能になります。これらにより、医薬品検査用の定量NMRや、アルツハイマー病発症に関わるアミロイドβペプチドの構造が超微量試料で得られる次世代超高磁場NMRの実現など、汎用化・高性能化による普及拡大が期待できます。共同研究グループは、今回の成果を活かして、現在の世界最高磁場である1.2ギガヘルツ(GHz)(28.2テスラ)を超える1.3ギガヘルツ(30.5テスラ)の超高磁場NMR装置の開発を目指します。

本成果は、科学雑誌「Superconductor Science andTechnology」(2021年9月17日付)に掲載されました。

本研究は、主として科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業 大規模プロジェクト型 エネルギー損失の革新的な低減化につながる高温超電導線材接合技術「高温超電導線材接合技術の超高磁場NMRと鉄道き電線への社会実装(研究代表者:前田 秀明)」(JPMJMI17A2)の支援を受けて行われました。また、一部は日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金特別研究員奨励費「1.3GHz NMR装置の実現に向けた高温超伝導マグネット保護技術の構築(研究代表者:末富 佑)」(19J11812)の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Development of a persistent-mode NMR magnet with superconducting joints between high-temperature superconductors”
DOI:10.1088/1361-6668/ac2120
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
柳澤 吉紀(ヤナギサワ ヨシノリ)
理化学研究所 生命機能科学研究センター 機能性超高磁場マグネット技術研究ユニット ユニットリーダー

斉藤 一功(サイトウ カズヨシ)
ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社 取締役/CTO

蜂谷 健一(ハチタニ ケンイチ)
株式会社JEOL RESONANCE 技術部開発グループ 第1チーム リーダー

前田 秀明(マエダ ヒデアキ)
科学技術振興機構 未来社会創造事業 大規模プロジェクト型 プログラムマネージャー

<生命機能科学研究センターに関すること>
山岸 敦(ヤマギシ アツシ)
理化学研究所 生命機能科学研究センター センター長室 報道担当

<JST事業に関すること>
庄司 真理子(ショウジ マリコ)
科学技術振興機構 未来創造研究開発推進部

<報道担当>
理化学研究所 広報室 報道担当
ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社
日本電子株式会社 総務本部 法務広報室
科学技術振興機構 広報課

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