観測史上最古の「隠れ銀河」を131億年前の宇宙で発見

ad

2021-09-23 国立天文台

図:既知の遠方銀河(REBELS-12、REBELS-29)と、そこから少し離れた場所で発見された塵に埋もれた銀河(REBELS-12-2、REBELS-29-2)。既知の遠方銀河(REBELS-12、REBELS-29)と、そこから少し離れた場所で発見された塵に埋もれた銀河(REBELS-12-2、REBELS-29-2)。アルマ望遠鏡で観測した炭素イオンからの放射を緑色、塵からの放射をオレンジ色で、ハッブル宇宙望遠鏡などで観測した近赤外線を青色で表しています。既知の遠方銀河では、近赤外線も、炭素イオンおよび塵からの放射も、いずれも検出されているのに対して、今回アルマ望遠鏡で発見された2つの銀河は近赤外線では検出されませんでした。これらの銀河は、塵に深く埋もれていると考えられます。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.) オリジナルサイズ(297KB)


アルマ望遠鏡を用いた大規模探査の観測データの中から、約130億年前の宇宙で塵(ちり)に深く埋もれた銀河が複数発見されました。そのうちの一つは、塵に埋もれた銀河として発見された中で、最も古いものであることが分かりました。今回の発見は、宇宙の歴史の初期においても、数多くの銀河が塵に深く隠されて未発見のままであることを示しており、宇宙の初期における銀河の形成と進化をより統一的に理解する上でたいへん重要です。

すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などを用いた遠方銀河の大規模探査が、過去20年以上にわたって行われてきました。その結果、ビッグバンから10億年以内の宇宙に存在した銀河が数多く発見され、宇宙の初期の時代において銀河がどのように形成・進化してきたのかについての研究が、大きく進んできました。このような銀河に多く含まれる太陽の数十倍程度の質量を持つ大型の星は、明るい紫外光を放っていますが、紫外光は銀河に含まれる塵によって大きく吸収・散乱されてしまいます。このため、初期の宇宙でこれまでに見つかっている塵に埋もれた銀河は、天の川銀河の1000倍以上という激しさで星を形成しているような、極めてまれな銀河に限られていました。

国立天文台や早稲田大学、広島大学の研究者を中心とした国際研究チームは、アルマ望遠鏡による大規模探査プロジェクト「REBELS」で観測された銀河の研究を進めるうちに、思いがけない発見をしました。本来の研究対象である銀河から少し離れた場所で、塵が放つ電波と炭素イオンが放つ非常に強い電波の輝線が、複数見つかったのです。そして驚くべきことに、この偶然見つかった新たな放射源を感度の良いハッブル宇宙望遠鏡で観測しても、何も見えませんでした。つまり、これらの放射は、ハッブル宇宙望遠鏡などで観測できる紫外光をほとんど放っていない、塵に埋もれた銀河からのものであることを示しています。

今回偶然に発見された塵に埋もれた銀河のうちの一つは、同様の銀河の中では観測史上最古となる131億年前のものでした。さらに驚いたことに、これらの銀河の星形成活動は、これまで知られていた塵に埋もれた銀河に見られたような爆発的なものではなく、これまでに約130億年前の宇宙で多数見つかっていた銀河と同程度でしかありませんでした。つまり、今回見つかった銀河は、塵に埋もれているということ以外は、従来知られている典型的な銀河となんら変わりはなく、多数の銀河が塵に埋もれていまだに発見されていないのではないか、ということを示唆しています。

この研究は、今まで考えられてきた宇宙の初期における銀河の形成の理論に、大きな影響を及ぼす発見です。今回発見されたような銀河が、初期の宇宙にどの程度存在し、どのように銀河全体の進化と形成に影響してきたのかをより統一的に理解するには、今後行われるさらに大規模な探査と、それを活用した銀河の形成に関する統一的な理解の進歩が待たれます。

この観測成果は、Fudamoto et al. “Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization”として、英国の科学雑誌『ネイチャー』に2021年9月23日付で掲載されます。また、それに先行して9月22日にオンライン版に掲載されました。

ad

1701物理及び化学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました