2021-07-08 アメリカ合衆国・ミシガン大学
・ ミシガン大学が、天然ガスをプロピレンに変換する脱水素化(propane dehydrogenation: PDH)触媒を開発。
・ プロプレンは、世界で 2 番目に多く利用されているポリプロピレンの原料として、毎年 800 万トンが使用されている。原油からシェールガス利用へのシフトに伴い、シェールガスの構成要素であるプロパンからプロプレンを効率的に生産する技術の開発が進められているが、シェールガスの蒸気分解によるプロプレンの製造は非効率。
・ 白金とスズのナノ粒子を二酸化ケイ素で担持した新 PDH 触媒は、非酸化脱水素化(non-oxidative
dehydrogenation)プロセスを通じ、既存の工業用触媒の少なくとも 10 倍の効率性で天然ガスをプロプレンに変換し、従来の 10 倍長く作動する。
・ 新 PDH 触媒の革新性は、白金とスズのナノ粒子の担体として二酸化ケイ素を使用した点。現行のPDH 触媒の担体は酸化アルミニウムだが、スズに反応して白金から分離して触媒を破壊する。新 PDH触媒ではこのような反応が起こらず、長寿命となる。
・ 白金とスズのナノ粒子を二酸化ケイ素で担持する方法は以前にも試行されているが、従来の合成技術では白金とスズの密接な相互作用を可能にする精度に欠けていた。そのため、まず、優れた相互作用の白金とスズの錯体を作製し、同錯体を二酸化ケイ素で担持することで、構造の極めて整った、高活性、高選択性で非酸化脱水素化でも安定する触媒を作製した。
・ 触媒商用化の鍵は、炭素による劣化後の再生方法を発見すること。現行の触媒の寿命は短いが、劣化した触媒を迅速・効率的に再生する複雑なシステムが開発されている。新 PDH 触媒でも同様なシステムが必要となる。
・ 新触媒はまだ研究段階にあるものだが、世界的な需要の急増、パンデミックによる生産問題や、ハリケーンによるメキシコ湾沿岸の製油所の操業停止を原因とした世界のプロプレン供給の課題解決に貢献できる可能性がある。
・ 本研究は、米国エネルギー省(DOE) Rapid Manufactruing Institute および基礎エネルギー科学部 (BES)Division of Chemical Sciences が支援した。
URL: https://news.umich.edu/solving-the-plastic-shortage-with-a-new-chemical-catalyst/
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Stable and selective catalysts for propane dehydrogenation operating at thermodynamic limit
URL: https://science.sciencemag.org/content/373/6551/217
Abstract
Intentional (“on-purpose”) propylene production through nonoxidative propane dehydrogenation (PDH) holds great promise for meeting the increasing global demand for propylene. For stable performance, traditional alumina-supported platinum-based catalysts require excess tin and feed dilution with hydrogen; however, this reduces per-pass propylene conversion and thus lowers catalyst productivity. We report that silica-supported platinum-tin (Pt1Sn1) nanoparticles (<2 nanometers in diameter) can operate as a PDH catalyst at thermodynamically limited conversion levels, with excellent stability and selectivity to propylene (>99%). Atomic mixing of Pt and Sn in the precursor is preserved upon reduction and during catalytic operation. The benign interaction of these nanoparticles with the silicon dioxide support does not lead to Pt-Sn segregation and formation of a tin oxide phase that can occur over traditional catalyst supports.