プラスチック廃棄物問題の解決に挑む (Combating plastics waste)

2021/4/26 ｱﾒﾘｶ合衆国・デラウェア大学 (UD)

・ UD が、レジ袋、ヨーグルトの容器やペットボトル等の使い捨てプラスチック廃棄物を迅速に分解し、ジェット燃料や潤滑油等の製造ですぐに使える分子に直接変換する技術を開発。
・ ゼオライトと混合金属酸化物による低コストのタンデム触媒を使用したハイドロクラッキングによる化学プロセスを用い、リサイクルが最も困難なポリオレフィンを他の技術に比べて約 50%少ないエネルギーで CO2 の排出無く数時間内で処理する。ポリオレフィンは、全プラスチック製品の 60～70%を占めている。
・ ハイドロクラッキングは、重質油の触媒による分解でガソリンを得る既存のプロセス。新技術では同プロセスによりプラスチックを分解し、液体燃料に直接転換できる枝分かれ分子に変換する。
・ ゼオライトは枝分かれ分子を作りやすい特性を有し、水質の浄化・軟化システムや洗濯用洗剤に利用されている。一方、混合金属酸化物は大きな分子を適切なサイズに分解する能力を有し、胸焼け等の症状を軽減させる制酸薬に利用されている。個別では触媒としての機能に乏しいこれらの材料を組み合わせることで、プラスチックを完全に溶解する優れた効果が得られる。
・ 化学的なプロセスによる燃料への変換を通じたプラスチック廃棄物量の低減は、製品寿命終了後リサイクルによって新しいものを製造する循環型経済の促進において効果的な役割を担う。今回開発した革新的な触媒アプローチは、緩やかな反応条件下で高度に特異な分子を獲得する解重合プロセスの探求における有意な進展と考える。
・ 同技術の産業利用には、さらに研究を進める必要がある。今後は、同技術による処理が可能なプラスチックと、それにより得られる物質について調査する。また、10～20 年後を目標にグリーンな電力を使用した化学プロセスの実現を目指す。
URL: https://www.udel.edu/udaily/2021/april/center-plastics-innovation-solutions-single-use-plastic-waste/

＜NEDO海外技術情報より＞

（関連情報)

Science Advances 掲載論文(フルテキスト）
Plastic waste to fuels by hydrocracking at mild conditions
URL: https://advances.sciencemag.org/content/7/17/eabf8283

Abstract

Single-use plastics impose an enormous environmental threat, but their recycling, especially of polyolefins, has been proven challenging. We report a direct method to selectively convert polyolefins to branched, liquid fuels including diesel, jet, and gasoline-range hydrocarbons, with high yield up to 85% over Pt/WO₃/ZrO₂ and HY zeolite in hydrogen at temperatures as low as 225°C. The process proceeds via tandem catalysis with initial activation of the polymer primarily over Pt, with subsequent cracking over the acid sites of WO₃/ZrO₂ and HY zeolite, isomerization over WO₃/ZrO₂ sites, and hydrogenation of olefin intermediates over Pt. The process can be tuned to convert different common plastic wastes, including low- and high-density polyethylene, polypropylene, polystyrene, everyday polyethylene bottles and bags, and composite plastics to desirable fuels and light lubricants.