2021-05-27 物質・材料研究機構 (NIMS),株式会社C-INK,株式会社プリウェイズ
NIMSは、サブミクロンスケールの任意の領域を選択的に極性化し、金属ナノ粒子の選択吸着により微細な電子配線を形成する印刷技術「2元表面アーキテクトニクス」を開発しました。
概要
- NIMSは、サブミクロンスケールの任意の領域を選択的に極性化し、金属ナノ粒子の選択吸着により微細な電子配線を形成する印刷技術「2元表面アーキテクトニクス」を開発しました。表面への簡便な処理によって、インクの吸着力と表面エネルギーが異なる領域を精密に作り分けることで、線幅0.6 µm (1 µm = 1/1000 mm) の微細な印刷を実現しました。大気下における簡易なプロセスによって、金属ナノインクの微細な印刷が可能になったことで、次世代モバイルデバイスやウェアラブルデバイスといった、様々な応用展開に発展すると期待されます。
- 金属や半導体のインクを用いる印刷プロセスによって電子回路を形成する試みは、「プリンテッドエレクトロニクス」として広く開発されてきましたが、インクジェットやスクリーン印刷といった既存の印刷技術では線幅が大きいという問題がありました。
- 今回、研究チームは、表面の任意の微小領域を極性にすることで、選択的に金属ナノ粒子を吸着し、サブミクロン幅の印刷を可能とする「2元表面アーキテクトニクス」を開発しました。これは、表面を部分的に活性化する紫外光照射と、活性化された表面のみ極性にする化学処理という2重のプロセスを行うことで、インクの吸着力と表面エネルギーが異なる領域を精密に作り分ける技術です。2つのプロセスともに大気下・短時間の簡便な処理であるため、フォトリソグラフィー等を用いる従来法と比較して、製造プロセスの大幅な短縮と低コスト化が見込めます。
- 株式会社プリウェイズとC-INKは、金属ナノインク向けの微細印刷装置「金属ナノ粒子配列システム」を開発し、各種基板に対して金属インクを良好に密着させる専用プライマーとともに販売を開始します。プリンテッドエレクトロニクスの一層の普及に向けて、微細印刷技術の社会実装を目指します。
- 本研究は、NIMS機能性材料拠点プリンテッドエレクトロニクスグループの三成剛生グループリーダー、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (MANA) の中山知信副拠点長、李玲穎JSPS特別研究員、天神林瑞樹独立研究者、株式会社C-INKの金原正幸代表取締役社長、株式会社プリウェイズ (代表 : 川島勇人) らにより、物質・材料研究機構センサ・アクチュエータ研究開発プロジェクト「三次元フレキシブル回路」の一環として行われました。また、つくばイノベーションエコシステム「金属インク微細回路パターン描画システムの事業化」、科研費基盤研究 (B) 「サブミクロンスケール選択的金属化プロセスによる革新的3次元実装技術の開発」の支援を受けました。本研究成果は、2021年5月14日に、独科学誌「Small」にオンライン掲載されました。
プレスリリース中の図 : (a) 「2元表面アーキテクトニクス」で印刷した微細パターン。(b,c) ポリイミドおよび透明フィルム上に印刷した回路。
掲載論文
題目 : Dual Surface Architectonics for Directed Self-Assembly of Ultrahigh-resolution Electronics
著者 : Lingying Li, Wanli Li, Qingqing Sun, Xuying Liu, Jinting Jiu, Mizuki Tenjimbayashi, Masayuki Kanehara, Tomonobu Nakayama, and Takeo Minari
雑誌 : Small
掲載日時 : 2021年5月14日
DOI : https://doi.org/10.1002/smll.202101754