世界最大級の乱流混合・栄養塩供給のメカニズムを捉えた
2021-03-26 愛媛大学
概要
最新の計測技術を駆使した調査により、急峻な地形(岩礁)の背後で黒潮内部に生じる強力な乱流の発達過程や、それに伴う栄養塩の表層への鉛直輸送の観測に成功しました。この肥沃効果は驚くほど大きく、黒潮の豊かな生態系の根幹を支えていると考えられます。
黒潮の豊かな生態系の維持に不可欠である下層から光合成可能な表層への栄養塩供給機構を解明するため、水産研究・教育機構、九州大学、東京大学、愛媛大学、鹿児島大学および東京海洋大学の共同研究チームは、鹿児島県南方沖のトカラ海峡を黒潮が通過する際、急峻な地形により攪拌されることで、どれだけの量の硝酸塩(植物プランクトンの成長に必要な栄養塩の一つ)が光合成可能な表層へと輸送されているかを、最新の計測技術を駆使して調べました。その結果、黒潮がトカラ列島の岩礁にぶつかったときに生じる強力な乱流と湧昇効果の詳細を捉えることにより、乱流による下層から表層への硝酸塩の鉛直輸送量を正確に計測することに成功しました。計測された硝酸塩の表層への鉛直輸送量は、年間最大で1平方キロメートル当たり約2万トン(黒潮流域の約3千トンの魚類生産を支える値)と、これまで世界の海で報告された輸送量の中でも最大規模のものです。この結果は、黒潮の流路上に存在する島や岩礁・海山などの急峻な地形により引き起こされる乱流混合や湧昇による表層への栄養塩の供給が、黒潮の豊かな生態系の維持に重要な役割を果たしている可能性を示しています。
この研究成果は、2021年3月25日午前9時(米国東部夏時間、日本時間25日22時)に米国地球物理学連合速報誌Geophysical Research Lettersにオンライン掲載されました。
本研究はJSPS科研費 JP15H05818、JP15H05821、JP18H04914、JP16H01590、JP18H04920の助成を受けたものです。