2021-01 林野庁
1 森林環境譲与税の取組状況
※森林環境譲与税を活用し、森林整備等が進んでいます。
森林環境譲与税を活用した取組状況を御紹介します。こちら
2 森林環境税の創設
平成31(2019)年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立しました。
これにより、「森林環境税」(令和6(2024)年度から課税)及び「森林環境譲与税」(令和元(2019)年度から譲与)が創設されました。
3 森林環境税創設の趣旨
森林の有する公益的機能は、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や水源の涵養等、国民に広く恩恵を与えるものであり、適切な森林の整備等を進めていくことは、我が国の国土や国民の生命を守ることにつながる一方で、所有者や境界が分からない森林の増加、担い手の不足等が大きな課題となっています。
このような現状の下、平成30(2018)年5月に成立した森林経営管理法を踏まえ、パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税が創設されました。
4 森林環境税・森林環境譲与税の仕組み
「森林環境税」は、令和6(2024)年度から個人住民税均等割の枠組みを用いて、国税として1人年額1,000円を市町村が賦課徴収することとされています。
また、「森林環境譲与税」は、喫緊の課題である森林整備に対応するため、「森林経営管理制度」の導入時期も踏まえ、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金を原資に、令和元(2019)年度から譲与が開始され、市町村や都道府県に対して、私有林人工林面積、林業就業者数及び人口による客観的な基準で按分して譲与されているところです。
なお、災害防止・国土保全機能強化等の観点から、森林整備を一層促進するために、令和2(2020)年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」の一部が改正され、令和2(2020)年度から令和6(2024)年度までの各年度における森林環境譲与税について、地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用し、交付税及び譲与税配付金特別会計における譲与税財源の借入れを行わないこととした上で、森林環境譲与税の譲与額を前倒しで増額することとなりました。
5 森林環境譲与税の使途とその公表
森林環境譲与税は、市町村においては、間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の「森林整備及びその促進に関する費用」に充てることとされています。
また、都道府県においては「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てることとされています。
本税により、山村地域のこれまで手入れが十分に行われてこなかった森林の整備が進展するとともに、都市部の市区等が山村地域で生産された木材を利用することや、山村地域との交流を通じた森林整備に取り組むことで、都市住民の森林・林業に対する理解の醸成や、山村の振興等につながることが期待されます。
なお、適正な使途に用いられることが担保されるように森林環境譲与税の使途については、市町村等は、インターネットの利用等により使途を公表しなければならないこととされています。
6 森林環境税及び森林環境譲与税関係法令等
森林環境税及び森林環境譲与税関係法令(関連リンク:総務省)
森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律(平成31年法律第3号)
・同法律概要
・同法律要綱
・同法律新旧対照条文
・同法律参照条文
森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成31年政令第88号)
・同政令概要
・同政令要綱
・同政令新旧対照条文
・同政令参照条文
森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律施行規則(平成31年総務省令第40号)
・同省令概要
地方税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第5号)
・同法律概要
・同法律要綱
・同法律新旧対照条文
・同法律参照条文
地方税法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第109号)
・同政令概要
・同政令要綱
・同政令新旧対照条文
・同政令参照条文
地方税法施行規則の一部を改正する省令(令和2年総務省令第21号)
・同省令概要
・同省令新旧対照条文
・改正後の様式(改正箇所のみ)
地方税法の施行に関する取扱について(道府県税関係)の一部改正について(令和2年総税都第14号)
・同通知別添
地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)の一部改正について(令和2年総税市第17号)
・同通知別添
(参考)森林環境税を巡る経緯
森林の有する公益的機能の発揮に関する財源確保については、これまで長期間にわたり、政府・与党での検討や、関係者による働き掛けが続けられてきました。
農林水産省では、平成9(1997)年に採択され、平成17(2005)年2月に発効された「京都議定書(※1)」に基づき、温室効果ガスの排出削減目標の達成に向けた森林吸収量の確保に必要となる間伐等を推進するため、安定的な財源を確保する必要が生じたことから、平成16(2004)年以降、森林吸収源対策のための財源となる税を要望してきました。
他方、こうした財源の確保については、これまで国に対して地方から声が上げられ続けてきました。特に平成18(2006)年度以降は、多くの森林が所在する市町村を中心に結成された「全国森林環境税創設促進連盟(※2)」及び「全国森林環境税創設促進議員連盟(※3)」により、森林環境税の創設に向けた運動が展開されてきました。また、地方独自の財源確保の取組として、森林整備等を主な目的とした住民税の超過課税の取組も行われており、これまで37の府県において導入されています。
こうした中、平成27(2015)年12月の地球温暖化防止の新たな国際的枠組みである「パリ協定(*4)」の採択や、昨今の山地災害の激甚化等による国民の森林への期待の高まり等を受け、引き続き森林環境税の創設に向け、政府・与党を通じた検討が進められ、平成29(2017)年度の与党税制改正大綱において、森林環境税の創設に向けて「平成30年度税制改正において結論を得る」とされました。これを踏まえ、平成29 (2017)年には、地方団体の意見を踏まえつつ、農林水産省において新たな森林整備の仕組みの検討を進めるとともに、総務省が地方財政審議会に設置した検討会において具体的な制度検討等が精力的に進められた結果、「平成30年度税制改正の大綱」における税創設の結論に至りました。
「平成30年度税制改正の大綱」においては、森林環境税の課税は令和6(2024)年度から、森林環境譲与税の譲与は、農林水産省が検討している新たな森林管理システムの構築と合わせ令和元(2019)年度から行うこと、また、使途について、市町村は、間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する費用に、並びに都道府県は、森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用に充てなければならないこと等が示されました。
その後、平成30(2018)年12月の「平成31年度税制改正の大綱」の閣議決定を経て、平成31(2019)年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立し、同年4月から一部が施行されています。
※1 京都議定書
平成9(1997)年に京都市で、「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」が開催され、条約の目的をより実効的に達成するための枠組みとして、先進国の温室効果ガスの排出削減目標等を定める「京都議定書」が採択された。
「京都議定書」では、平成20(2008)年から平成24(2012)年までの5年間を「第1約束期間」としており、この期間において我が国は基準年(平成2(1990)年)比6%の削減目標を達成し、このうち森林吸収量については、目標であった3.8%分を確保した。
平成25(2013)年から令和2(2020)年までの8年間を「第2約束期間」としており、平成23(2011)年に開催された「気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)」では、同期間における各国の森林経営活動による吸収量の算入上限値を平成2(1990)年総排出量の3.5%とすること、国内の森林から搬出された後の木材(伐採木材製品(HWP))における炭素固定量を評価し、炭素蓄積の変化量を各国の温室効果ガス吸収量又は排出量として計上することなどが合意されている。
※2 全国森林環境税創設促進連盟
構成員は地方公共団体。
※3 全国森林環境税創設促進議員連盟
構成員は地方議会の議員。
※4 パリ協定
平成27(2015)年のCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択され、平成28(2016)年11月に発効。
開発途上国を含む全ての国が参加する令和2(2020)年以降の国際的な温暖化対策の法的枠組み。
世界全体の平均気温上昇を工業化以前と比較して2℃より十分下方に抑制及び1.5℃までに抑える努力を継続。
各国は削減目標を提出し、対策を実施。
(削減目標には森林等の吸収源による吸収量を計上することができる)
削減目標は5年ごとに提出・更新。
今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収の均衡を達成。
お問合せ先
森林整備部森林利用課