アミノ酸・フラボノイド分析データの相違によるシャロット在来品種とタマネギ栽培品種のメタボローム識別解析

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シャロットがもつ高機能性を解明して新たなネギ類野菜資源の創造を目指す

2020-12-16 山口大学

山口大学大学院創成科学研究科(農学系学域)の執行正義教授と理化学研究所環境資源科学研究センター(CSRS)の共同研究グループは、シャロットがもつ有用な化学内容成分を明確化し、産業利用に資する新たな可能性を見出すことを目的として、シャロットとタマネギの肥大球に由来する407種の代謝物を高精度植物化学成分分析により検出して代謝プロファイルを作成しました。さらに、各種統計解析を駆使してプロファイルの詳細解析を行ったところ、シャロットとタマネギは明確にグループ分けされ、それぞれの代謝プロファイルには歴然とした違いがありました。射影における変数重要度とSpearmanの順位相関から、遊離アミノ酸およびオリゴペプチド(ジペプチド、トリペプチド)、フラボノイド(特にフラボノールアグリコンを有する代謝物)、アントシアニンおよび有機酸が、シャロット在来系統との関連性が高い上位の代謝物変数に含まれていることがわかりました。通常の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析による21種類のアミノ酸の絶対定量では、シャロットの方がタマネギよりも総じて高い含有量を示しました。本研究では、酷暑が続く熱帯環境下でのシャロットの適応メカニズムとして、アミノ酸やフラボノイドの高集積化により物質代謝を再プログラミングしていることが示唆されました。本研究成果は、2020年11月13日付で国際科学雑誌Molecules電子版に掲載されました。

発表のポイント

◆農業分野では、温暖化が進行する中でも、各種の生物的また非生物的ストレスに曝された状況でも健全に生育できる野菜の遺伝資源が求められている。

◆熱帯気候での栽培に適応しているシャロットは新たなジャンルのネギ属野菜として潜在力をもつともに、タマネギと交配が容易にできることから育種素材としても利用できるが、これまで実証実験として報告されていなかった。本研究では、広範なタマネギとシャロットの品種および系統を供試し、食味に影響を及ぼす化合物の変化の把握を試みた。

◆本研究成果はヒトの健康機能性や植物体のストレス耐性を併せ持つ新たな品種育成に貢献することが期待される。

研究内容

シャロットは、数多くの機能性代謝物をかなり多く含有するといわれており、タマネギの育種にとって重要な遺伝資源であるとともに、新規野菜品目として考えることもできます。シャロットがもつ有用な化学内容成分を明確化し、産業利用に資する新たな可能性を見出すことを目的として、(図1)に示すインドネシアのシャロット8系統ならびに国産タマネギ10品種(西日本型の短日性タマネギ7品種、北海道型の長日性タマネギ3品種)の肥大球の代謝プロファイルを液体クロマトグラフ 四重極飛行時間型質量分析装置(LC-Q-TOF-MS/MS)を用いた非標的メタボローム解析により明らかにしました。それぞ251個および389個の陰イオンおよび陽イオンモード代謝物シグナルからなるメタボロームデータセットを初期の検証に用い、最終的に合計407個の代謝物シグナルを詳細解析の対象にし、そのうち174個の代謝物シグナルにアノテーションを付与することができました。これらの代謝物の多寡に係る大規模数値情報を主成分分析、部分最小二乗回帰分析および系統樹・クラスター分析に用い、集団レベルでの比較解析を行って18品種・系統を2つの大きなグループに大別することができました(図2)。射影における変数重要度とSpearmanの順位相関から、遊離アミノ酸およびオリゴペプチド(ジペプチド、トリペプチド)、フラボノイド(特にフラボノールアグリコンを有する代謝物)、アントシアニンおよび有機酸が、シャロット在来系統との関連性が高い上位の代謝物変数に含まれていることがわかりました。通常のHPLC分析による21種類のアミノ酸の絶対定量でも、シャロットの方がタマネギよりも総じて高い含有量を示しました。本研究では、酷暑が続く熱帯環境下でのシャロットの適応メカニズムとして、アミノ酸やフラボノイドの高集積化により物質代謝を再プログラミングしていることが示唆されました。

詳しい資料は≫

アミノ酸・フラボノイド分析データの相違によるシャロット在来品種とタマネギ栽培品種のメタボローム識別解析

図1.本研究に用いたタマネギとシャロット

図2.主成分分析によりグループ分けされたタマネギ品種群(左)とシャロット系統群(右)

論文題目

題目:Metabolome-based discrimination analysis of shallot landraces and bulb onion cultivars associated with differences in the amino Acid and flavonoid profiles

著者:Mostafa Abdelrahman, Nur Aeni Ariyanti, Yuji Sawada, Fumitada Tsuji, Sho Hirata, Tran Thi Minh Hang, Mami Okamoto, Yutaka Yamada, Hiroshi Tsugawa, Masami Yokota Hirai, Masayoshi Shigyo

雑誌:Molecules

DOI:10.3390/molecules25225300

URL:https://www.mdpi.com/1420-3049/25/22/5300/htm

謝辞

本研究は、味の素株式会社との共同研究として実施されました。
●平成25~28年度「タマネギ中の風味成分およびその前駆体に関する検討」

1202農芸化学
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