(Ecological power storage battery made of vanillin)
2020/10/1 オーストリア・グラーツ工科大学(TU Graz)
・ TU Graz が、従来の高価で有害な液体電解質の代替としてリグニン由来のバニリンを利用する、レドックスフロー蓄電池を開発。
・ バニリンは、製紙産業で大量に排出されるリグニンを原料とする合成香料で、電解質製造の出発原料に適する可能性が確認されている。今回の研究では、有毒で高価な金属触媒を使用しない低刺激、室温下のグリーンケミストリープロセス(特許取得済み)でリグニンから分離・精製したバニリンをレドックスフロー蓄電池の材料に利用する。
・ 同プロセスはスケーラブルで継続的な生産に適するため、同技術の商用化を目指している。製紙工場に同技術の工場を設け、廃棄されるリグニンからバニリンを抽出する。残った廃棄物は通常のエネルギー利用サイクルに戻される。現在、紙製品を生産する世界的な企業の Mondi AG(Austria GmbH)が同技術に興味を示しており、具体的な協議を進めている。
・ 最終試験として、エネルギーインフラに同レドックスフロー蓄電池を導入できるエネルギー供給事業者を探している。原料の調達からコンポーネントや地域毎での発電にまで至るバリューチェーンを維持し、大容量のエネルギー貯蔵能力で電気系統の負担を緩和し、グリーンなエネルギー貯蔵革命に多大に貢献する同技術は、将来的に成功できると考える。
・ レドックスフロー蓄電池は、リチウムイオン蓄電池よりもスケールアップが容易で毒性が低く、よりリサイクルし易く、燃えにくい。また、長寿命で低自己放電。大量にエネルギーを貯蔵して電力系統のピーク電圧を和らげ、風力や太陽光等の再生可能エネルギー利用の拡大において重要な役割を担う。また、発電所、病院や電気ステーション等の定置型アプリケーションのバックアップにも適する。
URL: https://www.tugraz.at/en/tu-graz/services/news-stories/tu-graznews/singleview/article/oekologischer-stromspeicher-aus-vanillin0/
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Angewandte Chemie International Edition 掲載論文(フルテキスト)
2‐Methoxyhydroquinone from Vanillin for Aqueous Redox‐Flow Batteries
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/anie.202008253
Abstract
We show the synthesis of a redox‐active quinone, 2‐methoxy‐1,4‐hydroquinone (MHQ), from a bio‐based feedstock and its suitability as electrolyte in aqueous redox flow batteries. We identified semiquinone intermediates at insufficiently low pH and quinoid radicals as responsible for decomposition of MHQ under electrochemical conditions. Both can be avoided and/or stabilized, respectively, using H3PO4 electrolyte, allowing for reversible cycling in a redox flow battery for hundreds of cycles.