バイオマスや廃棄物を活用し、水素や化学品の併産も目指す
2020-11-20 新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDOは発電とCO2分離・回収プロセスを一体化したシステムの研究開発として、このたび2件のテーマを採択しました。発電システムに燃料をガス化するプロセスを統合し、CO2の分離・回収までを一体化することでエネルギー効率を向上させ、CO2の分離・回収コストの低減に取り組みます。また発電燃料には石炭やバイオマス、廃棄物を利用し、水素や化学品といった有価物を併産するポリジェネレーションシステム(図)の構築にも取り組みます。本事業によりCO2分離・回収コストを現状の4,000円程度/t-CO2から1,000円台/t-CO2まで低減する発電技術の確立を目指し、カーボンリサイクル技術の実用化に貢献します。
図 本事業で研究開発するポリジェネレーションシステムのイメージ
1.概要
火力発電や各種工場から排出されるCO2の削減が気候変動対策として喫緊の課題となる中、CO2を資源として捉え、回収・再利用する「カーボンリサイクル技術」の早期確立が求められています。経済産業省が2019年6月に策定した「カーボンリサイクル技術ロードマップ」や2020年1月の「革新的環境イノベーション戦略」でも、CO2を素材や燃料へ再利用することなどを通して大気中へのCO2排出を抑制していく方針が示されています。また、カーボンリサイクル技術のカギとなるCO2分離・回収技術※1については、コストが高いことが課題であり、イノベーションを通じたコスト削減を目指すとされています。
こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ガス化技術の適用によって発電とCO2分離・回収プロセスを一体化する研究開発として、このたび2件のテーマを採択しました。発電システムに燃料をガス化するプロセスを統合し、CO2の分離・回収までを一体化することでエネルギー効率を向上させ、CO2の分離・回収コストの低減に取り組みます。併せて、バイオマスや炭素系廃棄物(廃プラスチックなど)を燃料として利用し、水素や化学品といった有価物を併産するポリジェネレーションシステムの構築にも取り組みます。これにより、システムの経済性を高めてCO2分離・回収コストの低減につなげるだけでなく、中小規模発電を含めた実用化・事業化も視野に入れることが可能です。一方、出力が安定しない太陽光や風力のような再生可能エネルギーの活用を増やすには、需要と供給の不均衡を防ぐ電力需給調整が重要となります。このため本事業では、電力需給調整力をポリジェネレーションシステムに包括する※2ことも検討します。
本事業により、現状4,000円程度/t-CO2とされるCO2分離・回収コストを1,000円台/t-CO2まで低減する発電技術の確立を目指し、将来のカーボンリサイクル技術の実用化につなげていくことで脱炭素社会の実現に貢献します。
2.事業内容
- 事業名:カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/
CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発 【委託事業】 - 事業期間:2020年度~2024年度
- 全体予算:30億円程度
採択テーマ | 委託予定先 |
---|---|
多様な燃料を利用するCO2回収型ポリジェネレーションシステム基盤技術開発 | 一般財団法人電力中央研究所 |
CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発 | 大阪ガス株式会社 一般財団法人石炭エネルギーセンター |
【注釈】
- ※1 CO2分離・回収技術
- ガス性状に適した様々な技術があり、経済産業省が2019年6月に策定した「カーボンリサイクル技術ロードマップ」では、低圧ガス用(燃焼排ガスや高炉ガスなど)としては化学吸収法や固体吸収法が、高圧ガス用(化学プロセスや燃料ガスなど)としては物理吸収法や膜分離法が適しているとされている。
- ※2 電力需給調整力をポリジェネレーションシステムに包括する
- 発電と有価物生産の比率を調整し、発電出力を変動させることで、システム全体の効率を維持しつつ電力需給調整を行うことが期待できる。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:越後、青戸、菅本、阿部(正)
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、鈴木(美)